所によって鈍感-4
「どしたあ?」
またもや今村の弁当を食べていた高野が顔を上げて聞いた。
「こんな状況で寝れるかっ?!」
教室を出た今村は振り向いてギャラリーに指を差す。
「ついてきたら呪う!!」
やけにリアルな脅しをかけた今村はその場を後にした。
なんとなく昨日の化学準備室に来た今村は、ここが意外と穴場なのを知る。
こっちの化学室はあまり使われないので準備室も使われないのだ。
今村はボロいソファーに寝転ぶと目を閉じた。
今村を追いかけて来た加藤は化学準備室の前で深呼吸する。
自分の代わりに先生に伝えてくれた事にお礼を言いたかったのだ。
そっと引戸を引いて中を覗いて見ると、今村がソファーに寝そべって寝息を立てている。
(あ……可愛いかも)
無防備な今村の寝顔を見ていたら、いきなり目がパカッと開いた。
「きゃっ」
「加藤か……見物料とるぞ」
今村は大きく伸びながら欠伸をして体を起こす。
短い時間に熟睡したらしく、なんだかすっきりした。
「あの、さっきのありがとう」
「ああ、別にいいって……お人好しだしな」
もし、加藤が伝えても信じてもらえるか疑問だったし、騒がれるのは自分1人で充分だ。
「それとも何?俺1人の手柄になったのが悔しい?」
冗談めかして言う今村に加藤はクスクス笑う。
「とんでもない。出来れば内緒にしておきたいもん。ホントありがとう」
加藤はそう言ってにっこりと笑顔を見せた。
(……可愛い……)
今村の頭の隅で何かがギリギリと引っ張られる感じがする。
「眼鏡……無い方がいいって正解だったろ?」
今村と視線を合わせた加藤は頬を染めて小さく頷く。
「うん……眼鏡取ったら粗が見えちゃうから、ネットで調べて眉毛も整えたんだぁ」
「へえ……スカートも短くしたろ?」
「変かな?」
恥ずかしそうにしている加藤はなんとも可愛いらしい。
「ん〜…ちょっと後ろ向いてみ?」
「こう?」
素直に後ろを向いた加藤に近づいた今村は、その背中に抱きついた。