朝陽に包まれて....-3
「わかった.....お前達がそう決めたのなら....もう何も言わない....お前達の好きなようにしなさい....それから......覚えておきなさい....この家はお前達の家でもあるんだ....好きな時に帰って来ていいし....ずっとこの家に居てもいいんだぞ!」
「お父さん.....」
和雄は舞姫を見て黙って頷いた。
「変な事聞くようだけど...あなた達はもう....」
綾子が言い辛そうに口を開いた。
「それはない...正直言ってその願望がないって言ったらウソになる.....でも...姉さんが言ったんだ....もしそんな関係になってしまえばどうしてもその先を望んでしまう....そんな自分を抑えるために....一度でもそんな関係になれば二度と逢わないって....姉さんが本気だとわかったから....姉さんと一緒にいたいから....俺は先に進めなかった....これからも.....」
和雄と綾子は少し安心したような顔をした....
「お前達.....本気で.....」
和雄の言葉に二人は頷いた。
「舞姫...こんな頼りない男で本当にいいのか?」
和雄が心配そうに尋ねた。「はい!優羽はお父さんの子供だよ!大丈夫!......だよね?優羽?」
舞姫が笑顔で優羽を見ると
「努力します......」
優羽は自信なさそうに答えた....
「しっかりしてくれよ!俺の大切な娘をお前に託すんだからな!」
「はい.....努力します.....」
力なく返事する優羽を見て
「本当にいいのか?こんなんで.....」
「うん!」
舞姫の笑顔を見ると何も言えない和雄だった....
「優羽こそ...本当に舞姫でいいの?」
今度は綾子が優羽に尋ねた。
「この子家事全般ダメだから苦労するわよ!本当に大丈夫?」
「それはわかってる...覚悟してる....それでも一緒にいたいから....」
「優羽にその覚悟があるなら....」
「私は...優羽の良い所も....悪い所も....いっぱい知ってる....それでも優羽が好きなの....一緒にいたいの....」
「俺も.......」
「ゴメンね...意地悪で言ったんじゃないの!」
舞姫と優羽は綾子の顔を見た。
「他人同士なら....嫌いになって別れてしまえば逢わないでいる事も出来る....でも姉弟ではそうもいかない事もあるわ....だからあなた達の覚悟を知りたかったの....いいわ認めてあげる!」
綾子が笑顔を見せた。
「お前達がそれでいいなら.....俺は何も言う事はない....」
「ありがとうございます.....」
舞姫も優羽も涙を流していた.....
「遅くなったが.....晩飯にしようか?」
和雄が綾子を見ると
「そうですね!すぐに準備します!」
綾子が立ち上がった。
「俺も手伝うよ!」
優羽も立ち上がって綾子とキッチンに向かった。
「舞姫は行かないでくれよ!」
和雄が冗談っぽく言うと
「ちょっと!お父さん!それどういう事?」
「いやぁ.....美味しい晩飯を食べたいから....」
和雄が笑いながら言うと
「姉さんが手伝うと、とんでもない料理になるから!」
「そうね!優羽が居てくれて助かったわ!」
「ちょっと!みんなでそんな風に言わなくても....」
ふてくされている舞姫に
「舞姫は良いお嫁さんをもらったな!」
和雄は追い討ちをかけた。
「お父さん!」
いつもの家族に戻っていた....
遅い夕食の後...綾子と優羽が後片付けをしている時
「お父さん...私達....このまま....ここに居ていいかな?」
舞姫が和雄に話しかけた。
「何言ってるんだ!ここはお前達の家だって言ったろ!ずっとここに居ても良いんだよ!」
和雄は笑顔で答えた。
「ありがとう.....お父さん....」
舞姫は目に涙を浮かべていた....
「バカ.....これくらいで泣く奴があるか....」
和雄の目にもうっすらと涙が浮かんでいた....
そして....
キッチンで舞姫と和雄の会話を聞いていた....綾子と優羽の目にも光るものがあった....