朝陽に包まれて....-2
「ただいま....」
舞姫は家に着くとリビングに顔を出した。
「お帰り!」
綾子が笑顔で舞姫を迎えた。
「お父さん!舞姫が帰って来ましたよ!」
和雄に声をかけた時
「ただいま母さん....」
優羽が顔を出した。
「優羽?どうして.....」
綾子が言いかけた時和雄がリビングに入って来た。
「なんだ...優羽も帰って来たのか......」
和雄はホッとしていた。舞姫に謝らなければならないのはわかっていたが、どう切り出していいのかわからなかった。優羽がそのクッションになってくれれば......そんな思いがあった。
「母さんビールを持って来てくれ!」
「はい」
綾子がビールを取りに行こうとした時
「待って!話しがあるの...お母さんも聞いて!」
舞姫が切り出した。
「何?話しって?」
和雄も綾子も戸惑っていた。家出した舞姫を優羽が連れ帰って来てくれた....そう思ったが、二人の雰囲気に違和感を感じていた。
「お父さん!この人が私の好きな人です!」
舞姫は優羽の手を引いた。
「俺が悪かった....」
和雄が頭を下げた。
「母さんに言われたよ...まだ心配する年齢じゃないって....」
「私は本当に優羽の事....」「わかった...わかった....本当に俺が悪かった....だから許してくれ....」
和雄は舞姫の話しを本気にしていなかった。
「お父さん聞いて!別に冗談で言ってるわけじゃないの....私は本当に優羽の事が好きなの!!」
「えっ?」
和雄の顔色が変わった。
「私は一人の男性として優羽の事を愛しているの!!」
「舞姫...本気なのか?」
頷く舞姫を見て、和雄は信じられないという顔をしていた....
「優羽!お前は!」
「俺も...姉さんの事を一人の女性として愛している....」
「お前達!!」
殴られる....舞姫も優羽も和雄に殴られる事を覚悟した....しかし....和雄は黙って部屋に入って行った。
「お父さん待って下さい.....」
綾子は慌てて和雄をあとを追った。
舞姫と優羽はそのまま暫くリビングにいたが、和雄も綾子も何も言って来ないので、舞姫の荷造りのために舞姫の部屋へと向かった。
荷造りを終えた舞姫と優羽は、和雄の部屋の前に立って声をかけた。
「お父さん...お母さん...今までありがとうございました....私達....今日で....この家を.....」
舞姫の言葉の途中で
「待ちなさい...こっちに入って来なさい....」
和雄の声がした。舞姫が部屋の襖を開けると、畳の上に和雄と綾子が並んで座っていた。舞姫と優羽は部屋に入って、和雄達の前に座った。
「この家を出て...これからどうするつもりなんだ?」
和雄が先に口を開いた。
「来年...優羽が帰って来るので....二人で暮らす所を探そうかと....見つかるまでは友達の所に泊めてもらおうと....」
舞姫が答えると、和雄は優羽を見て
「優羽はどうするつもりだ?」
「先ずは大学を卒業しなければならないと....バイトしたお金もあるし....これからもバイトを続ければなんとかなるんじゃないかと......甘い考えかもしれないけど....」
「お前達...本気なんだな?」
和雄の言葉に二人は頷いた。