二人の間の壁-5
あの日....なぜ俺は....あんな事を言ってしまったんだろう....優羽は後悔していた....あの告白さえなければ普通の姉弟でいられたはずだ....口には出さないが舞姫もどこか意識している....すぐに会話がぎこちなくなるのがそれを証明していた....しかし....自分の恋は叶わぬ恋....それは自分が一番知っている....だからあの日自分を抑える事が出来なかった....舞姫は眠っている....聞いていない....そう思うと自分を抑える事が出来なかった....告ってしまえば心が軽くなる....そう思って口にしてしまった....優羽は二人の部屋を隔てている壁に手を当てて
(姉さん...俺は...姉さんの事を忘れなければならないのかな....)
優羽は壁の向こうの舞姫に心の中で尋ねた....
優羽が舞姫への思いを告白した時に....舞姫が優羽の告白を聞いていた事をメールした時に....二人は自分で気づかないうちに一歩前に踏み出してしまった....もう以前のような仲の良い姉弟には戻れない....自分の気持ちを偽って....仲のよい姉弟を演じる事は出来ない二人だった....
二人の部屋を隔てている壁は....二人の間を隔てている障害....どんなにお互いに思い合っていても乗り越えられない壁....しかし....本当の壁は....二人の中にある....常識....モラル....そういったものに縛られた心なのかもしれない....