時々、幽霊?-3
「あ〜…わりぃ、先生。何言ってっかわかんねぇや……やっぱちゃんとした所いきなよ」
見えるけど波長が合わないと聞こえない事もある、と言う今村の言葉に数学教師はよたよたと教室を出ていった。
数学教師のうなだれた背中を見送った今村は、軽い鞄を手に持つ。
今日はバイトも休みだし本屋にでも寄って帰ろう、と廊下に出た所で目の端に人影が映った。
何気なく視線を動かすと、それは加藤だった。
加藤の足は化学準備室へ向かっている……しかも、キョロキョロとかなり挙動不審な動きで。
(なんだぁ?)
興味をそそられた今村は加藤の後を追いかけた。
放課後の化学準備室はハッキリ言って不気味だ。
いろんな薬品の臭いが鼻をさすし、なにより実験器具が怪しい。
今村は足音を立てないようにそっと化学準備室のドアに張り付く。
「ん……は……ねえ……こんな感じでいいの?」
『違うわよっもっと指押し付けて……胸の方も休まずに……そう……』
(お?)
「あっ……んんっ」
教室の中から聞こえてきたのは2人の女の甘い声。
(おお、女同士の絡みか?!絡みなのか?!)
好奇心にかられ、今村は引戸を少し動かした。
引戸の隙間から中を覗くと、室内にあるボロいソファーの上で上着を脱いだ加藤が白いシャツの上から自分の胸を揉みしだき、もうひとつの手はスカートの中に潜りこませて快楽を得ようとしている。
(ん?1人?)
広くはない化学準備室だ、もう1人居たら見えるはずなのに中に居るのは加藤だけ。
『それで、割れ目に沿って指を動かしてみて』
「んんっ」
よぉく見てみると加藤の体に何か人影がダブって見えた。
(……霊?)
それは近くの女子校の制服を着た霊。
その霊は加藤の体を使って自慰をしているようだ。
「何やってんの?」
「『きゃああぁぁぁっ??!!』」
つい声をかけてしまった今村に気付いた2人?は、はだけた制服の胸元を握って悲鳴をあげる。
「い、今村くんっ?!」
慌てた加藤の眼鏡が落ちて、カシャンと乾いた音をたてた。