〜第3章〜 金曜日 シルヴィア-4
‥‥‥
‥‥
‥
―どこか遠くから声がする。
‥‥‥、‥‥‥エ
‥‥ニ、シ‥‥エ
ボクニ、シタガエ!
‥‥‥
‥そうだ、彼に従おう。
私は目を開けた。
心の中から沸き上る歓喜が、胸を突いて飛び出すのではないかと思われた。
―やった、やったぞ!
ついに生徒会長、シルヴィア・ウィンストンが僕のものになったのだ!
凶眼の赤光が放たれるや、彼女はそのままの姿勢で立ちつくしている。虜となったのは明白だった。
放課後から生徒会室を見張っていた苦労がようやく報われた。ここしばらく、生徒会役員が夜遅くまで残っているのは知っていた。何をしてるのかは知らないが、バスケの大会前はやることが色々あるのだろう。だが、他の役員達が生徒会室を出てきたけれど、生徒会長の姿はなかった。彼女が一人遅くまで頑張ってる姿は、容易に想像がついた。
一通り見て回ったが、この校舎に残ってる者はない。警備員も週末は鍵をかけるだけだし、先生方もバスケ観戦に繰り出してるはずだ。
つまり、ここは僕と会長、いや僕とシルヴィアだけの密室になったのだ。
ミリアという練習台を踏まえてなければ、即座に彼女を押し倒していたかもしれない。
はやる気持ちを抑えて、僕はじっくりと極上の獲物を見ることにした。
あの聡明で理知的な表情は見る影もなく、虚ろな視線が宙をさまよっている。凶眼に心奪われ、今の彼女は僕に従うだけの操り人形だ。
ドッドッドッ‥
心臓が唸りをあげて血液を送り込み、体中が熱く燃え上がる。
息苦しくなり、獣のように呼吸が荒くなる。その僕の息がかかるくらい近くに、シルヴィア・ウィンストンの端正な顔があった。
ミリアやレアンのような可愛らしいタイプではなく、美しいと形容するのがふさわしい美人である。
上品に結わえられた清楚な黒髪、深窓の令嬢を思わせる白い肌、気品に満ちた美しい顔立ち‥
だが理知に富んだ切れ長の青い瞳は、心と共に宙を彷徨い、文字通り人形のように、表情もなく立ち尽くしている。そして、すらりとした肢体。見慣れた学園の制服の下には、女の身体が息づいている。