君のいる景色 -2
「北に出る洞窟はここを含めて4ヶ所あります。こちらにはあえて兵は回さないとの事で……『参加したいなら勝手にしろ』……だそうです」
「あの女ぁ……」
他に言い方があるだろうに……可愛くない。
「無理はさせたくないけど傍に居て欲しい……ってのが滲み出てますわねぇ」
んふふ〜と嬉しそうに言いながら、ミヤは傷口の様子を診る為に顔の包帯を解きはじめた。
何処をどう聞いたらそういう解釈が出来るのか、とアースは不機嫌な顔をする。
そんなアースにクスクス笑っていたミヤは、ふと顔を曇らせた。
「……ああ……やっぱり目はダメですわね……」
腕をくっつけた後に目も修復したのだが、あまりにも酷い損傷で再生出来なかった。
眼孔の中で目玉は腐れかけている。
「くりぬいて義眼……水晶玉を入れておきますわね、瞼も自力では開けられないと思いますわ」
ゴリッと音がして眼球がくりぬかれ、はいっとばかりに手渡された。
「うげ……」
痛くはなかったが半分溶けて崩れている眼球は、自分のものとはいえ気持ち悪い。
再びゴリッと音がして水晶玉がはめられ、治療は終了。
後は熱を下げて体力を戻すだけだ。
ミヤは食事を取りに行き、息を吐いたアースは目を閉じてこれからの事に思考を巡らせる。
その頃ファンの避難場所ではキャラが王様達と話をしていた。
「魔物達がファンに上陸するまで後2日ありますので、ファンから脱出する者達の手助けをしてもらいたいのですが……」
「具体的には?」
「船を出して下さい。ファンから護衛船もつけます」
カイザスとサイラは自国の船で来ていたので、それを使えば避難者をいっぺんに運べる。
カイザスは南、サイラは東、西にはファンの船を出してそれぞれに護衛船をつける。
「それではこちらの守備の兵士が減るのではないか?」
護衛船には最低30人は乗せたい……となると、残りは60人。
「兵士は減りますが、守護する人数も大幅に減りますのでそちらの方が助かりますし……一般人にも協力をお願いしようかと思ってます」
結婚式の招待客に観光客、それにファンの住民……主に老人や子供達を連れて行ってもらえれば大助かり。
それに、アースの言葉を思い出した……『民だって国を守りたい気持ちに変わりはねぇんだ。少しは頼れ』……ここは協力してもらうしかない。
「わかった。脱出後も責任をもって民達を守ると約束する」
「頼りにしてます」
にっこりと極上の笑顔を向けるキャラに、カイザスとサイラの王様は照れくさそうに笑い返す。