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不倫ごっこ
【幼馴染 官能小説】

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不倫ごっこ-1

しばらく空き部屋になっていたお隣に新しい人が越して来たのは土曜日の事だった。

「お隣に越して来ました木下です。」

清楚というか、落ちついた感じの好い奥さんだった。
年も私と同じぐらいだろう。

私の住む市営住宅というのはだいたい似通った所帯ばかりで固めている。
例えば私の住むC棟では30代〜40代の所帯が中心になっていた。
そうして向かい側のD棟は比較的年配の所帯が住んでいるようだ。

「ジェネレーション・ギャップってやつだろうな…」

いつか新聞を眺めながら主人がそんな事を言っていたが、たしかにうちの棟は子供が多くて散らかってる。
それに比べD棟は古い佇まいながらも小綺麗にかたずいていた。

世代の違いで何か生活のルールみたいのも変わってくるものかも知れないと思った。

とにかくお隣の部屋にも人が住み始めたという事でこれからは何かと気をつけなければならない事もあるだろう。


翌週の金曜日だったと思う。
買い物を済ませて帰宅するとエレベーターにやはり会社帰りの男性と乗り合わせた。

どこにでもあろう夕暮れの光景のはずだった。

「何階ですか?」

後から乗り込んだ男性は二人しかいないのに奥に詰めた私に振り返る事なく問いかけた。

「あっ、6階でお願いします。」

男性は6階のボタンしか押さない。
同じ階の住民ならばだいたいの顔は知ってるが見慣れない風だったので、まだ見た事のないお隣のご主人かも知れないと思った。

ほんの後ろ姿だが、私はそんな事を思いながら男性の年格好を眺めていると彼は急に振り返る。

「エミちゃん?」

「えっ?」

親しげに私の名を呼ぶ男性の面影。
それは数年前とか学生時代に…とかではなく、ずいぶん懐かしい親しみを感じた。

「タカ…君?」

エレベーターはまもなく6階で開く。
そう、たしかに幼なじみのタカ君の面影がそこにあった。

お隣に越して来たのは理髪店のタカ君…木下孝君だったのだ。

おかしな気持ちだった。
もしもタイムマシンというものが実在したとすれば、きっとこのエレベーターのようなものかも知れない。

何か胸がいっぱいで言葉が出ない。
そのまま二人エレベーターを降りて、また不思議な事に無言のままで軽く会釈して隣同士それぞれの部屋へ帰って行ったのだった。


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