White Day -side;arrk--5
テーブルに淹れ立ての紅茶を置いて、イスに座ったままダンマリを決め込むリーの正面に座った。
「取りあえずな、唐突に家を出ていくのは止めろ。毎度毎度連れ戻しに行くこっちの身にもなれ」
「だから…っ」
「言っただろ、そういう問題じゃねえんだ。治安は良くても何があるか解かんないんだよ」
「別に何にもないじゃないか、今までだって」
「今までは、だろ。…………お前、本当に自覚あるのか?」
「何がだよっ? 意味解かんない!」
冗談でも笑えねぇんだけど、それ。
しかも、怒って反論してくるあたりが、全く『解かってない』ことを物語ってる。
「お前、もう15だろ。自分が…ガキじゃないことくらい解かってるだろ」
「何だよ、それ」
「自覚、無いのかっ?」
勘弁してくれ。それは本当に『困る』んだよ。
「ッ アークはいっつも言うじゃないか! 『ガキだ』って! それが何だよっ 急に!」
「…………。そうか」
小さくそう呟くと、リーはビクッと肩を揺らした。
席を立って、リーの傍に行こうとすると、それを避けるようにリーも席を立って後ずさりする。残念なことにそのまま壁で遮られてそれ以上どうすることも出来なくなる。
怯えたように視線を床に落としたリーの肩を掴む。
「お前、勘違いしてないか? オレが『待ってる』だけだと思ってんのか?」
「!?」
何のことか解からず、顔を上げるリーを追い詰めるように壁に押さえつけた。
「お前がいつまでもオレを『男』として認識しないでいるから、『ガキだ』って思わなきゃキツイんだよ。オレはお前の『保護者』のつもりも、ましてや『友達』のつもりも無い。解かるか?」
「何言って」
目を丸くして、言葉を詰まらせたのは理解できたからなのか、できてないからなのか、全く解からない。ガキって言うより鈍いのかもしれない。
てゆーか、こうなりたくなかったから、それなりに一線を引いてきたつもりだったんだ。 今更、抑えられるかよ。
空いている片方の手で顎を掴み、上を向かせた。そのまま身を屈めて、ゆっくりとリーに顔を寄せ、唇と唇が触れるかどうかというところで小さく声を掛けた。
「まだ解かんないのか」
「―――っ!?」
リーはがっちりと石の如く身体を固めた。