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Crimson...Side story
【ファンタジー 恋愛小説】

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Crimson in Christmas-1

この国に、リアナたちの住むガラナの街に来てもう少しで1年。

 この1年近くでたくさんの人に出会った。おれ……違った、わたしみたいな悪魔との混血だったり、エクソシストじゃない聖職者や、教会の仕事に関わらない普通の人。すごくたくさんの人たち。そして、皆明るくて、話しやすい人ばかり。

 来たばかりの頃はリアナやお世話になってるリアナのお母さんにくっついてしか街を歩けなかったけど、皆話し掛けてくれて段々と慣れて、直ぐに一人でも外に出れる様になった。

 この街はすごく良いところだと思う。

そ して、わたしはこの街で学校にも通わせて貰ってる。昔、途中で行けなくなっちゃったから、行ってみたくてリアナに言ったら、二つ返事で通わせてくれた。それはとっても嬉しかった。


****


「クリスマス?」


 今日は学校帰りにリアナと会って、通りがかった喫茶店に誘われた。

 最近、街の街路樹やお店に緑や赤の飾りが付けられてて、何だろうって聞いたら、リアナが教えてくれた。


「うん。異教のお祭りみたいなものかな。クリスマス、聖誕祭とも言うんだ」

「へえ。異教なのに、ここでお祭りするの?」


 違う宗教なのに皆楽しそうに準備してる。それって良いの? なんて思って訊いてみたら、リアナはニコニコ笑った。


「うん。だって楽しいでしょ?」

「そうかも知れないけど……」


 そんなもの、なのかな?

 よく解らないけど。


「このガラナに住む人は殆どが悪魔絡みなんだ。エクソシストだったり、その伴侶だったり、悪魔に家族を奪われた人だったりね」

「……うん」


 それはやっぱり悲しいことだよね。

 そしたら、リアナの手が伸びてきて、頭を優しく撫でてくれた。


「ほら、そうやって暗くなる。皆同じなんだよ。苦しかったり、辛かったり、不安だったり。そんな気分で居るのは身体にも心にも良くないからね」

「だから、街全体でやるの?」

「そ。気持ちが少しでも前を向けるように、幸せだと思える時間が一分でも長くなるようにね」

「へえ、そうなんだぁ」


 いいなあ。楽しそう。皆、楽しめたらいいな。


「リアナ、リー」


 暫くしたら、喫茶店にヒューイが入ってきてた。


「ヒューイ。お疲れ様ー」


 リアナはニコニコ笑って、手を振った。

 ヒューイはテーブルまでやって来ると、小さく笑みを浮かべてわたしの頭を優しく撫でてくれた。この2人、やること一緒だ。嬉しいけど。


「今日、点灯だろ。行かないのか?」

「あ、そろそろだね。3人で行こっか」


 窓の外を見るともう陽が暮れ始めていて、東の空がもう暗くなってる。

 喫茶店から出るとリアナとヒューイに連れられて、街の真ん中にある広場に向かった。


「点灯って?」


 歩く道すがら、ヒューイに何しに行くのか訊いてみた。


「ユグドラシルにイルミネーションを施して、クリスマスまで毎晩、光で綺麗にライトアップするんだ」


 サラッと言ったけど、それって大丈夫なの?

 ユグドラシルって正教会の神様だよね? 良いの?


「えっ 聖樹にそんなことして怒られないの?」

「女教皇の許可は貰ってるよ。だから、大丈夫。ユグーも皆と祝いたいんだよ」


 問題ないよってリアナは笑った。

 リアナは聖樹“ユグドラシル”のことを“ユグー”って呼ぶんだ。この国を守ってくれてる凄い樹を友達みたいに呼ぶって、リアナは怒られないのかな…? 不思議だ。


「ほら、あれ」


 街の真ん中、広場の中央に大きな樹が1本。寒くても、暑くても、ずっと青々とした葉で生い茂っている大樹。ヒューイから聞いた話じゃ、もう2000年くらい生きてるって。

 そして、この国には6本のユグドラシルがあって、このガラナのユグドラシルが一番長生きなんだそうだ。

 そんな樹の枝には電飾や色とりどりの丸い飾りや動物の人形が綺麗に付けられて、沢山の街の人たちが囲んでいた。

 まだ点灯してないけど、これだけでも綺麗だ。


「もうすぐ点くよ」


 リアナがそう言ってから、十秒も経たないうちに赤や緑や黄色の電飾がキラキラと点いた。そして、それは不規則に点滅して、綺麗だ。

 街の皆も拍手や歓声を上げて、嬉しそうだ。


「すごーいっ」


 こんなの生まれて初めて見た。お母さんが生きてた時はそんなの祝ったりするなんて見たことも聞いたことも無かった。


「ね、リーちゃん」

「何?」


 ユグドラシルを嬉しそうに見上げてたリアナが不意に名前を呼んだ。


「リーちゃんは今、何か欲しいもの、ある?」

「え? 何で?」


 よく解らなくて、リアナの顔を見たら、ニコニコ笑いながら教えてくれた。


「クリスマスってね、良い子はプレゼントが貰えるんだよ。何か欲しいのある?」

「ええっ いいよっ、別に良い子じゃないし」


 あの国を出る前、アークに我が儘を言った。いっぱい困らせた。いっぱい迷惑かけた。

 今だって、リアナやヒューイたちに助けてもらって生きてるのに。

 そんなわたしが“良い子”なんかじゃない。


「そんなことないよ。クリスマスまでまだ一週間あるから、ゆっくり考えてね」


 リアナが優しく笑ってそう言ってくれて、ヒューイが頭を撫でてくれた。


 これ以上、何かを欲しがったらきっとバチが当たるよ。今でもスゴく有り難いんだから。


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