幼なじみの法則C-1
『え?好きな人?いるよ?』
ドキッ
と、心臓が一度ゆっくり動いたけど、平静を装って返事する。中学校に入ってから習得したポーカーフェイスが、まさか健吾相手に役立つとは思いもしなかった。
めずらしい….!健吾があたしのことを聞いてきた!
しかも、カテキョの最中に!!!
….胸中はうれしいだけではないけど。
「いつもと違う」ただそれだけで、期待と不安がない交ぜになっている。
というのも。
健吾は基本、あたしに興味がない。
うちの家族と一緒にいる時は話に乗ってきてくれるけど、二人きりの時はそんなこと一切なし。あたしが勝手に一日の出来事を話して、健吾がテキトーに相づちしているだけ。
その点は、たま〜につっこんでみるんだけれど、
「ははっ!おまえはホント人間観察が得意だな!」
….こんなふうに、まったく取り繕いもしない。
まぁ健吾は一時期からあたしのことを敬遠しているし、興味がないのは今に始まったことじゃないんだけどね。かなしいことに。
ただ、だからこそ、突然の問いかけに驚いている訳なんだけど….
それにしても、健吾が呆気にとられているのはなぜ???
『….え?中学生が好きな人いるのなんて、普通じゃない?つき合ってる子だって何人かいるよ?』
「あ、あー….たしかに。普通….だよな、うん」
まだ呆けた表情の健吾に、なんだか戸惑う。