加柄割人 VS 高校番長-2
ボクの友達が高校一年生だった時の話です。ボクの話ではありません……。
ボクの友達はとても喧嘩の弱い人です。でも高校一年の時に、何故か三年生に喧嘩を挑まれました。
体育館の裏に呼びだされたボクの友達は、恐そうな三年生と対峙したとたん、背を向けて、
「ご、ごめんなさ−い」
と連呼して、そそくさと逃げました。
「まちやがれ。このヤロォ！」
三年生は必死にボクの友達を追い駆けたそうです。でも逃げ足だけは速いボクの友達には三年生でも追い付けませんでした。
「てめぇ勝負しろや！コルルァァ−−！！」
巻き舌はとても恐いと言う事が分かりました。
目元にうっすらと涙をうかべて、ボクの友達は逃げました。三年生は鬼の形相だったそうです。
ボクの友達は校舎の中に逃げました。こんな時でも昇降口で靴を脱ぐのがボクの友達っぽいです。
階段を必死に上がり自分のクラスの掃除道具入れに隠れたらしいです。
三年生が教室に入ってくると、ボクは息を殺して三年生がどこかに行くのを待ちました。見つかったら殴られてしまうので隠れる方は必死です。
三年生は相手の力量が分かったのか、
「悪いな。お前を潰すってダチにも言っちまったから２、３発殴られてくれよ。お前の顔にでも傷を付けねぇと、俺の面子が立たねぇからよ。素直に殴られてくれや。一年ボウよぉ」
とボクの友達を捜しながら、無茶苦茶な要望を言っていたそうです。
三年生はボクの友達を捜しだせずに教室から出ていったので、ボクの友達はダッシュで一階に向いました。でもすぐに見つかってしまって、また追い駆けられます。三年生との距離は十メートルもなかったと思います。
追う方は猫のトムなんかよりずっとお気楽ですが、追われる方は鼠のジェリーの様に悠長なもんではありません。“な・か・よ・くケンカしな〜♪”と言われても追われる方には無理な話です。なんたって相手は鬼の形相ですから……。
「てめぇ、男ならかかってこいやぁ−−！」
と三年生はすごい怒っていまして、ボクの友達は男だけど男である事を簡単に捨てて逃げました。
三階から二階に。二階から一階にとボクの友達は逃げます。目的地は弱い者の安息の地、職員室です。
なんたって男じゃないので殴られないためなら何でも有りです。
一階に付くと廊下を右に曲がります。勢い余って壁に激突しそうでしたが、うまく手で力を流しました。そしたら後ろで、
ゴトゴトガトガタガラガラドンッ！！
三年生が階段から落ちてきました。階段落ちをするスタントマンも真っ青の落ち方です。右足を骨折してしまい、顔面も強打したらしくてすぐに腫れ出しましたから……。それは痛そうでしたそうです。
だからボクの友達は職員室に先生を呼びに行きました。そして三年生は救急車で病院に運ばれていきました。