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加柄割人 VS 高校番長
【コメディ その他小説】

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加柄割人 VS 嫌いなアイツ-3

「……と言う事なんです」 園長先生はボクのお母さんを保育園に呼んで、カメムシの事を話しました。
「相当ショックが大きかったのかもしれません。ずっと『臭い臭い……』と言ってるんですよ」
「本当にくしゃいもん」
 少し臭いのはとれましたが、鼻から息を吸えばまだにおいました。
「いい加減にしなさい。全然臭くないでしょ!」
 お母さんも信じませんでした(実際に手は臭くないので当たり前ですが…)
「園長先生……。あの……、この子は大丈夫なんでしょうか? その……、頭のほうは?……」
 お母さんが心配そうにボクをみます。
「私は一時的なものと思いますが、心配なので一度医者に診せた方がいいかも知れません」
 と園長先生が言うので、「お医者しゃんイヤやぁー! 注射こわぃ」
 ボクはまた泣きはじめます。
「大丈夫よ。お薬だけで治ると思うから」
 園長先生は思いっきり作った顔で言いました。
「クシュリ苦いでいや!」
「カツヒトっ! そんな事言ったらずっと臭いままなのよっ!」
「クシャイのもイヤゃー」
 僕が大泣きする姿を、お母さんも園長先生も哀れんだ顔で見ていました。きっと3歳にして精神の病にかかった(と思った)ボクの将来を心配していたのだと思います。


『加柄割人さ−ん。中にお入りください』
 と病院で呼ばれたので、お母さんと一緒に診察室に入りました。
「割人君。まだ臭いにおいはするかな?」
 とお医者さんが言ったので、ボクは首を縦に振りました。(その時は微かに臭いだけでしたが)
「おかしいですねぇ。異常な結果は見当たらないのですが……」
 お医者さんは何枚かのテスト結果を見ながら、難しい顔で考えます。
「割人君。すごく臭いかな?」
 とお医者さんが言うのでボクは、「シュこし……」と答えます。そしたら先生はまた考えて、
「おかしいなぁ。PTSDにしても、こんな短時間で症状が弱まるという事は聞いたことがありません」
 と頭を傾げます。
「先生、うちの子は大丈夫何でしょうか?」
 お母さんは言いました。「大丈夫と思いますが、一応安定剤を処方しておきますので、割人君が不安定になられましたら飲ませてあげて下さい。……少し苦いけど我慢して飲むんだよ、割人君」
 お医者さんは頭を撫でてくれましたが、『苦い』と聞いたボクは恐怖して、またもや泣きました。
「割人。飲まないと臭いままって言ったでしょ!」
 涙がぽろぽろ流れてきたので、ボクは腕で一生懸命拭きとりました。
 そしたら、いつの間にかにおいが消えていました。治ったのです。(厳密に言うと、涙を拭いていたらにおいが落ちただけですが)
 だからボクはビタッと泣きやんで、
「お母シャん。もう、クシャくなくなったよ!?」
 と自分でも信じられないけど言いました。これでにおいとも薬ともおさらば出来ると思い、嬉しくなりピョコンピョコンと診察室で跳ね回りました。が、
「薬がイヤだからってウソつかないの。さっきまであれだけ臭いって言ってたのに、そんな簡単に治るもんですか! ちゃんと臭いと思った時は、お薬を飲ませますからね」
 お母さんは信じてくれませんでした。
「本当にクシャく無いもん」
「嘘はいけないっていつも言ってるでしょ!」
「ホントだもぉん」

 それから「もう臭わなくなった」と言い続けて、やっとお医者さんが信じてくれて、無事病院を後にする事が出来ました。


 アイツのせいで、ボクは危うく精神の病と診断されるところでした。
 皆さんもアイツにはお気を付けください。アイツは生物兵器です。


 ボクが嫌いなアイツの話を終わります。


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