演劇部バレンタイン公演-19
「今日は楽しかったよね!!」
私は一緒に帰っている麻里に話しかけた。
「そうね...あんなに盛り上がるなんて....今でも信じられないよ....あれって....夢じゃないよね?」
麻里は私の目を見つめた。
「うん...夢みたいだけどね....っていうか....今も....長い夢の続きを見ているみたいだよ.....夢なら...このまま醒めないでいて欲しいなぁ.....」
私も麻里の目を見て笑った。
「ところで.....告白するの?」
「えっ?」
「前に言ってたじゃないの!この公演が成功したら、告ろうかなって思っているって......で....どうするの?」
「どうって...まだ考えてなかった....」
「麻里の好きな人って...どんな人?」
「そうね.....責任感が強くて....自分の事より他人を大切にしてくれて....引っ込み思案なところもあるけど....一度走り出したら後ろを振り向かないで走り続ける......そんな人かなぁ....」
「ライバルが多そうね?」
「えっ?」
「麻里の話しを聞いてたら...凄くモテそうだなぁって....」
「うん.....確かにモテる....だから私なんかが告っても....うまくいかないから....やめようかなって....」
「私は告ったほうがいいと思うよ....」
「えっ!?」
「絶対うまくいくって...断言出来ないけど....告らなければ何も変わらないからね......まっ....彼氏にフラれた私が言ったって説得力がないんだけどね!!」
最後のほうはわざとおどけたように言うと、麻里は少し笑った後無言で歩いた。
「また明日ね!!」
私はいつもの交差点で麻里に声をかけて、自分の家へと右に曲がった。
「美咲待って!!」
振り返ると麻里が深刻そうな顔で立っていた....私は慌てて戻った....
「どうしたの?」
「............」
麻里は何も答えなかった....
「麻里?」
「..........好きなの.........」
「えっ!?」
「美咲の事が......好きなの.....友達としてではなくって.....男の人を好きになるのと同じように....美咲の事が好きなの....」
「........」
私が驚きのあまり無言でいると
「ゴメンね.....やっぱり気色悪いよね....女の子が女の子の事好きになるなんて....でも....本気なの....本当に美咲の事が好きなの....自分でもおかしいって思ってる....何度も忘れようって思った....でもダメだった....美咲の事が頭から離れないの....美咲の事ばかり考えてしまうの....ゴメン......やっぱりおかしいよね.....」
麻里は涙を流しながら、交差点を渡り私とは反対の方向へ走って行った。
私は呆然と麻里が走り去って行くのを見つめていた......