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美咲推し!!
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演劇部バレンタイン公演-1

三学期が始まってすぐ、私・織田麻里(おだまさと)は演劇部の顧問の柏木先生に呼び出された。
「先生お呼びでしょうか?」
「おう!来たか!」
先生は手を止めて私を見た。
「来月の14日に行われる三年生の送別会だが....三年生のリクエストで演劇部がトリの二時間公演をする事になった!」
「えっ.....本当ですか?」
「ああ」
「で...何をやるんですか?」
「ただの演劇では面白くないので....これをやろうと思う....」
そう言ってDVDを取り出してパソコンにセットした。そこに映し出されたのは....AKBのステージだった...
「先生.....これって.....」
私が驚いていると
「そうAKBだ....ただお前達がAKBの真似をすればいいというわけじゃない....お前達にやってもらいたいのは....ステージと客席が一体となったこの公演の再現だ!」
「そんな無茶な.....」
私は思わず呟いた。
「無茶な事だからこそ挑戦してもらいたい....」
「先生考えてみて下さい!この客席にいるのはAKBのファンの人達です。だからこんなに盛り上がっているんです。私達に再現出来るとは......」
「やる前からあきらめてどうする!演劇部の部長としてお前が考えなければならないのは、どうしたら成功するかだ」
「そんな無茶な事言われても.....」
私は途方に暮れてしまった。
「あっそうだ!あの子.....北原はどうしてる?北原を誘ってみたら....」
「一応声をかけてみますけど....」
「それじゃぁ頼むよ!」
先生は私の肩を叩いて
「俺はこれから会議があるから後は頼むよ!」
先生はそう言って部室から出て行った。パソコンには楽しそうに歌うAKBが映し出されていた....
「私達に出来っこないよ.....」
私はパソコンの電源を切り部室をあとにした。

さっき先生が言っていた北原....北原美咲....彼女が私の気を重くさせる....美咲とは中学からの同級生で、学校祭の時に私の推薦で演劇部でもないのに演劇部公演の主役をしてもらった....もちろんそれだけの実力は持っていたので何の問題もなかった....それどころか彼女がいなかったら成功なんてしてなかっただろう....しかし....今....美咲は....そんな心境じゃないだろう....彼氏にフラれたらしくひどく落ち込んでいるみたいだ....だから....演劇部員でもない美咲を誘うのには躊躇いがあった....
「ハァ.....」
私は深いため息をついた。



最近理彩や直輝君と木下君の関係がおかしい....私・北原美咲(きたはらみさき)との事があったからなのだろうけど、私はそんなに気にしてない....心変わりは誰にでもある事だから....仕方ないとあきらめている....木下君と以前と同じように話す事はまだ出来ないけど....理彩や直輝君が木下君と話さないのはなんか違うと思う....そんな時、麻里に呼び出された....
「あのね....ちょっと言いにくいんだけど....」
麻里は躊躇いがちに私に話しかけた。
「何?遠慮しないで言って!」
「来月の三年生の送別会に演劇部で公演する事になって....美咲にも参加して欲しいんだけど....」
「私に?」
「うん....あっ....でも....イヤならそう言ってね....」
「いいよ!」
あっさり私が返事したので
「えっ?」
麻里が驚いたように言った。
「いいよ!私で良ければ、お手伝いするよ!」
「本当にいいの?」
「うん!」
「ありがとう!それじゃぁ放課後部室で待ってるね!」
麻里は嬉しそうに戻って行った。正直....以前の私だったら断っていただろう....でも....今は....何かに熱中していたかった....木下君の事を忘れるために....その時はまだ簡単に考えていた....


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