演劇部バレンタイン公演-15
「ちょっと!どこに行くの?」
麻里が私の腕を掴んだ。
「どこって.....」
私はステージの方を見た。
「美咲聞いてなかったの?私達は....」
麻里は腕を掴んでいる手に力を込めた。
「わかっているよ麻里...けどこのままほっとけないでしょ!」
私は麻里の手を振り解いてマイクを掴みステージの上へと向かった。
私がステージの上に現れると歓声のボルテージが上がった。
「みなさん本当にありがとうございます!!」
私は頭を下げた。歓声が私を包んだ。私は頭を上げて客席を見回して、
「みなさんゴメンナサイ!」
再び頭を下げた。一瞬歓声が止まった。私は頭を上げて
「みなさんの期待に応えたい....私達みんな....そう思っています....でも....もう限界なんです....本当にゴメンナサイ....」
「そんな事言わないでよ!」
誰かの声が聞こえた。
「AKBさんは1日に三回公演する事もあると聞いた事があります....それに比べると情けないのですが....声がかすれた子もいます....足が張っている子もいます....私達満足に歌えないんです....本当にゴメンナサイ....」
私は頭を下げるしかなかった....
「何言ってるんだよ!俺達はAKBが見たいんじゃない!AKABANE24が見たいんだよ!」
「歌えないなら踊ればいい!踊れないなら歌えばいい!出来る事をやればいいじゃないか!」
「なんでも全力で挑戦しているAKANE24が見たいんだよ!」
私は何も言えなかった....そんな時私達の名前を呼ぶコールが起きた。
「美咲!葵!麻里!美結!明日香!詩織!......」
一人一人の名前がコールされていった.....
やがて私達の名前を呼ぶコールが大歓声に変わった。私が振り返るとメンバー全員がステージに立っていた....
「みんな来てくれたんだ!」
「何言ってるんですか!これだけの声援を無視しているなんて....女が廃りますよ!」
葵ちゃんの言葉に大歓声が起きた。
「葵ちゃん...もしかして....切っちゃったの?」
「切っちゃったって...何をですか?」
「何って...それは....あの....」
「ちょっと待てぇ!その先はアイドルが口にしてはダメ!」
麻里が私を止めに入った。
「麻里こそ変な事想像しないでよ!私は葵ちゃんいつ髪の毛を切ったのかなぁって思って....」
葵ちゃんに注目が集まった。
「葵ちゃん!!頭!!」
麻里が言うと
「あっ......」
葵ちゃんは髪の毛を触りながら慌てていた....
「葵ちゃん!!さっきまでのポニーテールも可愛かったけどショートも可愛いじゃない!!」
私は笑いをこらえながら言った。葵ちゃんはさっきまでポニーテールのカツラを付けていた。いつカツラを取ったのか今は地毛だった。葵ちゃんは男の子にしては長めの髪型なのでショートカットの女の子のように見えた。
「大丈夫!可愛いよ!葵ちゃん!!」
「本当に?ありがとうございます!!美咲先輩!」
その言い方が可愛いかったので
「葵ちゃんやっぱりあなた.....」
「いい加減にしなさい!!」
麻里が私の頭を軽く叩いて
「私達はウケない漫才をするために出て来たわけじゃないのよ!」
そう言って私達を睨んだ。「私達をその気にさせたのは美咲なんだから責任とりなさないよ!」
麻里は笑顔を見せながら言った。