演劇部バレンタイン公演-13
「考えてみて.....アンコールの最後の二曲は、みんな知ってるのよ!カラオケで歌ってもいるだろうし....最高に盛り上がる曲....だから....美咲に託そうと思ったの....勿論....美咲にかかる負担やプレッシャーは想像以上になると思う......もしみんなが望むなら....前言を撤回してもいい....美咲のフリを変えなくてもいいよ....みんなが選んで....」
中田先生は私を見て
「美咲!いいよね!!それで!」
私は返事出来なかった....簡単に決める事など出来なかった....例えみんながそれを望んだとしても....多分みんなも思っていたのだろう....私に負担をかけられないと....誰も口を開かなかった....
「美咲........」
麻里が私を見つめていた。「ゴメン......」
麻里が深々と頭を下げた....そのまま頭を上げないで続けた....
「美咲には感謝してる....部員でもないのに手伝ってくれて....それだけでもすごく感謝している....こんな事....言えないのはわかっている....だけど....情けないけど....今の私達じゃダメなの....美咲のチカラが必要なの....お願い....今からフリの変更なんて大変なのはわかってる....でも....美咲....お願いします!!」
「私からもお願いします!」
一年生の明日香が頭を下げたまま言った。
「美咲先輩は誰よりも上手くて....誰より努力してた事....私達みんな知ってます!だから....もし失敗しても誰も美咲先輩の事責めたりしません!」
「明日香の言う通りよ美咲!どんな事があっても....美咲の事を責めたりしないし....責めさせない....だからお願い!!」
美結も明日香も頭を下げたまま上げなかった。
「お願いします!!」
メンバー全員が私に頭を下げたまま上げなかった。
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど....」
「ムリだって言わないで下さい!ボクは信じています!美咲先輩なら出来るって....だからお願いします!!」
葵ちゃんも頭を上げようとしなかった。
「わかったわ...だからみんな頭を上げて!」
そう言うしかなかった....でも引き受けた以上全力を尽くす覚悟でいた。
「ありがとう...美咲!」
麻里が私に抱きついてきた....
「迷惑をかけるかもしれないけど....全力を尽くすから.....」
そう言う私にみんなが声をかけてくれた。
「美咲!あなたなら大丈夫!」
と.....
私は失敗するわけにはいかない....みんなの期待に応えなければならない....イヤ....みんなの期待に応えたい....中田先生には、私が歌っていない時は、マイクを麻里か葵ちゃんに預けてダンスに専念するようにと言われている....一応アドバイスはいただいたが私の自由演技という事になった....
一曲目は第一回総選挙の結果を受けて作られた曲....この曲は葵ちゃんにマイクを預けた....マイクの受け渡しにも細心の注意を払った。
二曲目は第二回総選挙の結果を受けて作られた曲....カラオケでも人気がある曲なので、基本的にはあまり変えていないが、私のダンスのフリを少し激しく、そして少し大きいものに変えた....ただ....ダンスに専念する時間が短いのでマイクを持ったままで歌った。三曲目は第三回総選挙の結果を受けて作られた曲....この曲はマイクを麻里に預けた....次の歌い出しは私のソロから始まるので、私の左後ろにいる麻里のほうにターンしなければならないのに、間違って右側の葵ちゃんのほうへとターンしてしまった....
(ヤバい.....)
急いで麻里のほうに走れば間に合うが、そうすればパフォーマンスが台無しになってしまう....私は近くにいる葵ちゃんに目で合図を送った....葵ちゃんは軽く頷いて私に近づいてきて、すれ違いざまにマイクを渡してくれた....葵ちゃんはそのまま麻里のほうに行き近づいてきた麻里とすれ違いながらマイクを受け取った。私達はマイクの交換とポジションチェンジを三人で行った。おかげで無事終了した。