追憶-1
『ねぇ……もし願いがひとつだけ叶うとしたら……貴方は何を願う?』
―君と共に生きる。
『私はねぇ……争いの無い世界……ふふ……月並みかしら?』
―君の願いは私が叶えよう。
―だから……置いて逝かないでくれ。
―両手を染める赤い血。
―夢なら覚めてくれ。
―夢じゃないのなら……記憶を……消してくれ。
両手を見ても、今は何もない。
生きているのかも怪しいくらい青白い手。
自分が望んだ姿だ。
顔を上げると、目の前にはそびえ立つ巨大な水の壁。
『……邪魔は……させない……』
氷の魔物に合図をすると、それぞれのやり方で水の壁を凍らせ始めた。
青白い両手を凍った壁につく。
『……雷撃……散!』
氷の壁に雷が左右に走り、そこから細かく枝分かれしていった。
ビキキキィィィ
パキーーーッ
まんべんなく枝分かれした亀裂は、壁を氷の粒に変える。
『……あの時と……同じだ……』
降り注ぐ氷の粒。
『……綺麗だ……』
あの人も見ているといい。
『……もうすぐだよ……イレーヌ……』
目を閉じて空を仰ぐ。
その後ろで控えていた魔物の大群はゆっくりと進む。
島国、ファンへ向かって。