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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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カウントダウン-1

 暗い夜空にポツンと赤い点が見えた。

「アビィ!!」

 猛スピードで飛び続けたアビィは、墜落するように中庭へ降りる。

『キュウゥ』

「うん、ご苦労様。休んでね」

 力尽きて小さくなったアビィを頭の上にヒョイっと乗せたエンは、うずくまっているキャラの肩に手を置いた。

「キャラ?」

 何も反応を示さないキャラを、エンは胸に引き寄せてきつく抱き締める。

 アース達が出発した後、アビィが見たものをエンが実況していたのだが、言葉だけでは伝わりにくく(けしてエンの喋り方のせいではない)、ベルリアが映像投影装置を作った。
 水晶に魔方陣を組み込み、エンの脳内を映像化するものでエンが水晶に手を置くだけで反対側の壁に映像が映るという便利な代物。

 全員がそれを見ていた。

 四方から襲ってくる白い刃。

 血飛沫の中に舞う腕。

 ただの映像を見てるだけでも気分が悪くなるというのに、キャラはそれを目の前で見ていた。
 しかも、吹き飛んだのは愛する男の腕なのだ。
 そのショックは計り知れない。
 自力で起き上がったピートを横目で確認したエンは、キャラの耳に口を寄せた。

「ねぇ……キャラ?アースは約束を破る男?」

 エンの言葉にキャラの肩がピクリと動いた。

「『離さない』も『迎えに行く』も守ったでしょう?」

 エンはキャラの背中を擦って続ける。

「アースは……何て言った?」

「……すぐに……行く……」

 掠れた小さな声でキャラは答えた。

「でしょ?だからさ、アースが戻ってきた時にすぐ腕がくっつかないと困ると思うんだよね?」

 エンはキャラが抱いているものに手を触れる。
 キャラはビクリと反応して首を横に振り、それを更に強く抱いた。
 頑なな態度のキャラにミヤがそっと近づく。

「姫様……わたくしはゼビアで医療魔術の魔導師クラスというランクをいただいております」

 ミヤはキャラの顔を覗き込み、言い聞かせるように丁寧に話した。

「少しでも早く処置しないと……手遅れになってしまいますわ……」

 キャラは力を抜いて抱いていたもの……アースの腕を見つめる。
 まだ暖かいそれは、いつもキャラを包んでくれるもの……だが今は……キャラは目を閉じてアースの手の平に頬を当てた。
 暫くそうした後、顔を離したのでエンはそっとアースの腕を取る。
 今度は抵抗しなかったが離れていく腕にギリギリまで触れていた。
 エンはアースの腕をミヤに渡すと、キャラの手を握る。


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