序章-9
「お久しぶりです。感動の再会のお手伝いですか?」
『ミヤは儂の娘みたいなもんじゃからな。お主も花束ぐらいは用意せんといかんぞ?』
アースとキャラの再会がバトルだったとミヤから聞いていたオーウェンは嫌味たっぷりにアースに言った。
「私達らしいでしょう?」
後ろからアースの腕に抱きついたキャラは、オーウェンに悪戯っぽく言う。
オーウェンは片眉を上げて呆れた表情をすると、ゼビア国王に声をかけた。
『長旅ご苦労、ドグザール殿。これで招待客が揃った。今夜は皆で会食にしよう。それまでゆっくり休まれよ』
「お招き感謝致しますぞ、オーウェン殿」
2人は会話をしながらゼビア用の離れへと移動し、アースも騎士団員と共に荷物を運ぶために、腕に抱きついているキャラの手を軽く叩いて離れるように合図をする。
渋々といった感じで離れたキャラの手を取って少し引き止めたアースはその手に唇を落とした。
「花束いるか?」
本当はそれぐらいするつもりだった、と拗ねるアースにキャラは吹き出す。
「いらない。アースが居ればいい」
キャラはアースの手にキスを返して城に戻って行った。
その背中を見送りながら、手をにぎにぎしているアースの頬は少し赤くなっている。
「隊長〜…何やってんスか……ファンの姫にまで手を出すなんて……キャラにちくりますよ?」
どうやらファンの姫とキャラが同一人物だと気づいてない騎士団員達がアースにちょっかいをかけてきた。
「馬ー鹿。見て気づけよ。あれがキャラだよ」
「は!?え!?嘘?!」
「船降りた時、エンが思いっきり名前呼んでたじゃねぇかよ」
「いや、俺ら国王と姫が挨拶してるとこからしか見てないんで……」
あんまりの化けように騎士団員達は呆然とする。
スオウ団長とアースのバトルに割り込んで圧勝したり、魔獣に変化したアースに容赦なく攻撃をしかけていたあのキャラと、ドレスに身を包んでキレイに飾りたてられたファンの姫が同一人物だと、いったい誰が気づくと言うのか……。
「……詐偽だ……」
騎士団員の1人がボソッと呟く。
「これは詐偽だ!!あのキャラがお姫様なんて誰が思うってんだ!?」
「ああ!!そうだ!!お姫様ってのはもっとおしとやかで、たおやかであるべきだ!!」
「わかっていたなら、もっと仲良くなってあんな事やこんな事を!!」
「今からでも遅くはないはず!!」
「キャーラー!!せめてほっぺにチュウッー……」
「やかましい!!!」
ドガシャン
城の正面玄関でギャアギャア騒いでいるゼビア騎士団の上に長椅子がぶっ飛んできて、見事に命中。
騎士団員は長椅子の下敷きとなった。