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なんてこと無いはずだった旅
【ファンタジー その他小説】

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幸運の神だと言うが”勘違いの可能性”ある-2

自分は「神」である,そんな風に考えてはいたが

この大きな国を目の前に自分が少し小さくも見えた,と言う小さな事に気付いた
だが根幹であることに「俺」であることが抜け落ちる気がしない,小さいって言っても…まぁ
人間サイズに比べりゃ,それなりに小さいがな

さて…と…参った

肝心の酒屋に入りたいが,ここに来るまでに酒屋をもう5、6軒は見てきたが、どこに入るか決めてない・・・
日も暮れかけて美味そうな匂いが飲食店の辺りからプンプンと香ってくる
あぁ、腹へってんだなぁ,そんな風に改めて感じさせるような刺激が辺りからもうプンプンと鼻を突きやがる,嗅覚がいいわけじゃないがもう焼けた美味しそうな肉に,熱々のスープなんかが頭を何度もよぎる・・・

腹の音は正直者だった

とそんな事考えていると、ひょいと背中から抱きかかえられた

えっ?

「野うさぎ一匹ご案内」

はぁっ?

誰だお前

と誰だか知りもしない,誰かに抱えられているんだけど背中に物凄い柔らかいのが当たっております、えぇそりゃあ、柔らかいけど…なんだこれ

恐る恐るとゆっくり振り返るとプックラ膨らんだ,「たらこ唇」がまず目に入って
次になんともまん丸大きなお目めに,少しカールのかかった茶色の髪だった…見て一つ分かった事、 女 ってことだけ

でだからなんだ?

拉致?誘拐?・・・食われる!?
ふっ ふざけんなぁぁっ,さっき始まった旅立ちがこんな所で,(自称)可愛いうさぎちゃんの丸焼きになってたまるかよっ

とにかくその腕の中で暴れて,喚いていたんだけど,この細い腕のどこにそんな筋力があるんだと思う力に押さえつけられて,背中にあたっとります えぇっ 当たります
抑え付けられれば,抑え付けられるほどに当たります、ていうか

あててんのよ

と言われそうなほどですが,ていうか おいっ,そこのお前っ,助けろっ
食われるぞっ,俺 食われるぞっ スルーか、目の前すぎていくなぁぁぁっ

って程にまぁ,人がすいすい見ない振り,見ない振りですぎて行くわで,頭にガツンと重い何かが打ち込まれた,記憶にあるのはそれだけ…

_________


んっ?・・・・何? 生きてる?

どこだ,ここ天国?にしても酒くせぇ…,天国って酒くさい場所だったのか始めてきたけどこんな匂いなのか,天使とかってのは酷い酒飲みの集まりだったのか
地獄に俺が行くはず無いからまず天国だろうと,確信したけど…やけにうるせぇ…なんだよっ、それなりにしんみりしたいって時に

!?

がっ

また たらこ唇だ

目の前にあったのはたらこ唇の女に,それに酒臭いおっさんどもの集まりが下品な笑いでゲラッゲラッしてやがる,なんだここ,天使ってのはこんなムサイおっさん共だったのか
救われねぇ,本当に救われねぇよ 
ひでぇ,地獄なんだろうか…そんな場所にいく覚えが無いぞ

「お目覚めかい?」

たらこ唇がそう俺に言ってくる
うるせぇ,馬鹿,マジで腹のそこで不安とか恐怖とかそんな感情以上に怒りがこみ上げてきた,もうとにかく声の限りに叫んで…いたつもりが…

「ふざけんじゃねぇよっ! どこなんだ…ここ……」

言葉を遮るように,俺が寝かされていたテーブルに届けられた美味そうな焼けた肉,そして,酒
二度見して,確認して,
また たらこ唇を見て…

また肉見て

「食べなっ」

ぶっきらぼうに言うもんだ,この「たらこ唇」
…あっ…わかった,ここ天国じゃない酒屋だ
てかなんで,何にも言わないで背中向けてつかつかと歩いていく,たらこ唇

匂いをかいで,そんで毒とかなんか臭く無いかって確かめるつもりが
嗅げば嗅ぐほどに凄いいい香りがするんだよ,ジューシィな匂いが頭を通り抜けて
自然とヨダレが出てくる

「たらこ唇」は忙しそうに酒を届けて,そして,無愛想な顔で冗談を言ってカウンター席の周りの酒臭いおっさんどもを笑わせていた

かたや店の端っこの窓際テーブルの俺
そんなもん見ても腹は膨れなかった
とにかく辛抱たまらんとばかりにフォークとナイフもセットで置かれていたが
それの使い方はまぁまぁ知ってはいたが,乱雑にもうとにかく急いでナイフで肉を切ってフォークでぶっさして,その肉を口の中にいれた

うまっ

とにかくすげぇっ美味かった,空腹 うんぬんもありましたが
腹にガツンとくる濃い味付けがもう染みこんできやがる

酒を飲みたいって当初の思いで,酒を喉に通していくと,それもまた格別に美味いのなんのって,染みてきやがる 脂っこい口の中にシュワシュワの泡が響いて響いてたまらん
すっきりと喉を通り抜けて,そして鼻にのこるアルコールの香りまで心地いいもんだ








 


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