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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-1


始業式が終わると、今度は各クラスでHR。
今回は、転校生も居ないし高学年なので自己紹介は軽め。

席から立ち上がって、名前とあだ名、高学年へ向けてのメッセージ。

「えっと、笹野菜美です。菜美で良いです。高学年になったので、責任を持って下の学年達を引っ張っていきたいです」

瑞稀が空を見るという自分の世界から帰ってきた時に、聞こえた自己紹介。
その自己紹介をしたのは、自分の3つ斜め前の席の女の子。
つまり、一番前の席の女の子。

瑞稀はその女の子に若干見覚えがあった。
同じクラスになった事は無いが、あまり良い噂を聞いた事がない。
それは、彼女がイジメを受けているという噂だった。
ポッチャリした体型に、ピンクのカーディガン。
天然パーマなのかくるくるした髪は横に一つにまとめられている為、余計くるくるしていた。
甘ったるいその言葉は、ブリッ子を思い出させた。

「(・・確かに好かれるタイプではないなぁ。甘ったるい・・)」

瑞稀は少しうんざりしながらも、自己紹介していくクラスメイトを見た。
順番が回って、次は隣の席に座っている拓斗。

「・・鈴乃拓斗。あだ名は何でも良いです。・・とりあえず勉強頑張ります」

あからさまに、めんどくさがった様子の拓斗は簡単にそれだけ言うと座ってしまった。
瑞稀も気持ちが分からないわけでもないので、とりあえず声をかける。

「そんなに面倒臭がらなくても・・」
「しょうがない。面倒なのは面倒だから」

悪びれる様子もなく、むしろ綺麗に開き直った拓斗に溜め息を付いた瑞稀は、
自己紹介が自分の番になっていることに気づく。
慌てて立ち上がった瑞稀は何を言うか迷った。

「えっと・・。八神瑞稀です。あだ名はなんでもいいです。
・・う〜ん・・とりあえず、自分にやれる事はしていきたいです」

そこまで言うと、座る。
得に思いつかなかったので、その場しのぎになってしまうが頭からポンっと出てきたセリフを言う。
確かこんなセリフをどっかのマンガの主人公が言ってたな、と思いつつ。

瑞稀が自己紹介を終えた所で、やることが全て終わったので始業式恒例の大掃除に入る。
班は、先生が適当に言っていく。

「じゃあ、廊下掃除をお願いするのは3班。ホウキでゴミを取るだけだから3人でね。
メンバーは、・・そうだなぁ、八神さんと鈴乃君と笹野さんにしようかな」
「ちょ、適当過ぎません!?」

担任の決め方に思わず反論する瑞稀。
すると、拓斗が笑いながらなだめる。

「まぁ、良いんじゃないか?」
「笑いながら言う事かな・・」

溜め息をついた瑞稀にクラスメイト達から声がかかる。

「廊下掃除なんだからいいだろ!」
「そうだぞ!トイレ掃除よりマシだ!」
「頑張ってね、瑞稀ちゃん!」

暖かい言葉だが、明らかにクラスメイトたちの顔はニヤけている。
理由は、拓斗とずっとゲームトークを繰り広げていたからだろう。
それを、ラブラブなものだと勘違いされたようだ。

「あの、皆?なんか分かんないけど誤解!誤解だからね!?」

自分でも何を言ってるのか・・、よく分かってはいないが、とりあえずこの場を収拾するにはコレが一番だろうと思った。
ただし、赤くなっていく顔で言われても、全く効果ない。

「顔赤いぞ!」
「ヒューヒュー」

とうとう騒ぎ出してしまった生徒を、担任が見ていられなくなったのか落ち着かせた。
そして、班の発表を再び伝え始めた。
その話を聞くどころじゃなくなった瑞稀は赤くなった顔を見られないように窓の外を見つめた。その様子を見た拓斗は、小さく笑った。

その微笑ましい二人を、菜美は見つめていた。


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