THANK YOU!!-4
すると、拓斗が気まずそうに聞いてくる。
「じゃあ、ずっと勉強なのか?」
拓斗の顔からして、聞いてくるのは絶対家族についてだろうと思い、いつもの言葉を用意していたら、見事に違う言葉で、瑞稀は思わずマンガのように椅子から落ちそうになった。
「ううん、むしろゲームしかしてないから」
事実を答えると、拓斗の顔が明るくなった。
「なんのゲームだ?俺もゲームしかしてないんだ」
嬉しそうな・・子犬のような表情で聞いてくる拓斗に瑞稀は驚きながらも、久しぶりのゲーム共感者に出会えた事を喜んでいた。
「基本はバトルゲーム。最近だと〇ックマンやテ〇ルズが主かな」
「本当か!」
瑞稀の言葉に、拓斗の顔がますます喜びに変わった。
「俺もその二つなんだ」
「本当!?」
瑞稀も、拓斗の返事に喜んだ。
実はこの二つのゲームはストーリーが長かったり、システムが難しかったりして、
小学生があまりやるモノでは無かった。
瑞稀は、ゲーム好きの叔父から渡されてハマったので、そのことに気付かなかった。
どうやら拓斗も同じだったらしく、ゲームについて語れる奴を探していたという。
「よかった!話せる人見つけられて!」
「俺もだ。・・話しかけて良かった」
「話しかけられてっていうか、視線で訴えてて・・の間違いじゃない?」
瑞稀が茶化すと、拓斗は照れたのか、顔を少し赤くさせてそっぽをむいてしまった。
その拓斗に言葉をかけようとすると、担任の中岡先生が教室に入ってきて、始業式が行われる体育館に移動となった。
移動も、列はつくるが、自由なので、クラスメイト達が「お前らいつのまに仲良くなったんだ」と驚いている中、機嫌が治った拓斗とゲームトークを繰り広げていた。
会話が止まらない二人を、後ろからじっと見ている一人の女の子の姿があった。
そうして、瑞稀の高学年開始一日目。
出逢いの日が流れていった・・・。