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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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別離の間〜Side:F〜-5

「わかった……だが、忘れなくていい」

 忘れていい事ではない、しっかりと自分の罪を覚えておいてくれ、と言うラインハルトの言葉に、キャラはとびっきりの笑顔を見せる。
 こうして、ラインハルトは国民に同性愛者だとカミングアウトする事になったのだ。
 しかし、もっともらしく理由を並べ立てたキャラだったが、実のところラインハルトに恥をかかせたかっただけ。
 告白後のラインハルトの憔悴しきった姿は、キャラの復讐心をおおいに満足させた。

 その後は、発言通りキアルリアとしての穴埋めの日々だった。
 近隣諸国へ帰還の挨拶回りに、延ばし延ばしにしていた社交界デビュー。
 その都度グロウの召喚を希望されたので、必然的にグロウも貴族間のマナーやらを学ぶ事になった。

 そして、召喚師であるキアルリア姫と魔獣コンビの噂はあっと言う間に広がり、今では2人の姿を見るためだけにファンを訪れる観光客まで現れるという人気ぶりだ。
 グロウはというと意外にもこういうきらびやかな世界が肌に合ったらしく、愛想を振りまいて貴族の姫君のアイドルになっている。
 魔獣になっても女好きは健在らしい……。
 そして半年の間、どう和解したのかはわからないが双子の兄とグロウは良い関係になった。

護衛をするのにどうしても分かれなければならない時もラインハルトの護衛をかって出て側に居るようになったし、たまに3人で呑んだくれたりしている。

「キアルリア、どこだい?」

 木の上でぼんやりと半年前の事を思い出していたキャラは、ラインハルトの声に現実に戻る。

『ライン、ここだ』

 キャラよりも先に返事をしたグロウは、木の上から飛び降りるとラインハルトの脚に体を擦り付けた。
 すっかり仲良くなった2人を見たキャラは嫌な顔をする。

(まさか、デキてるとか……ねぇよな)

 ゲイとはいえ相手は魔獣だ……いくら何でもそこまで変態じゃありませんように……キャラは祈るような気持ちで木から降りた。

「あぁ、もう……せっかくのドレスなのに……」

 ラインハルトはキャラに近づき、この日の為の特別なドレスの裾をパタパタと払う。

「さ、時間だよ」

 少し離れて全身をチェックし、ひとつ頷いて差し出してきたラインハルトの手を、キャラは渋々といった感じでとる。

 結婚式当日まで様々な催し物があり、今日はファンが主催するイベント……格闘10人抜きバトル。
 簡単に言うと10人連続で勝てば商品が貰えるのだ。
 参加は自由で、商品は金一封と花嫁の口付け。
 美しい花嫁のキスとあれば参加希望は後を絶たないだろう……。

「面倒くせぇ……」

 ボソリと呟いたキャラの言葉に、ラインハルトとグロウは喉を鳴らして笑った。

「人事だと思って……」

 キャラは憮然として足を進める。

 会場は城の中庭広場。

 既にたくさんの見学客と参加希望者でごった返している。


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