PiPi's World 投稿小説
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No771-02/26 00:02
男/フロムポスト
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欠伸の似合う人だ。
彼がその仕草をする度に、私は安らぎを覚える。
それほどまでに彼の欠伸は、私にとって芸術的だったのだ。
だから私は嫌な事があるとこんな風に彼を連れて屋上にやってくる。
くよくよとしている私に呆れてもらう為に。
あまりに青くて広くて暖かい空に、眠くなってもらう為に。
「認めなよ…いい加減さ…」
認められるよ、あなたが欠伸をすれば。
「そんな時もあるって」
そう、そんな時もある。
だから、あなたに欠伸をしてもらわないと、私はダメなのだ。
赤点だらけのテストを破って、空に投げつける。
だが、逆風で数枚、顔にはりついてしまい、私は驚いて手で顔を掻き回した。
「……面白い人だ」
彼はそう言って、空を見上げて大きく欠伸をした。
それはやはり、芸術的だった。
よし、それだけで私は大丈夫。
あなたが欠伸をしてくれる限り、多分、私も世界も大丈夫だ。

「大丈夫」で。
No767-02/25 21:26
女/ミラージュ
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「認めようよ、いい加減さ…」
屋上は、夏の日差しがまぶしく、雲一つない青空はどこまでも高かった。

「まぁ、こういう時もあるって」
僕は再度、彼女に慰めをかけるが、彼女は数枚の紙を手に、絶望なオーラに包まれぶつぶつと呟き、聞いていなさそうだった。

…それほど、赤点がショックなのか?

僕が感慨にふけっていると、彼女は立ち上がり、数枚の紙――赤点のテスト用紙を瞬く間に破る。

紙切れは、風に舞い世界に飛んでいく――と思いきや風向きが変わり彼女の顔に突撃する。

彼女は髪をぐしゃぐしゃにし紙切れを振るい払う。

相変わらず、面白い人だ。

「……空が高いなぁ」

僕は緩やかに背伸びをして、大口を開けて欠伸をした。


次は「欠伸」で。
No766-02/25 20:06
女/Dyuo
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彼女はゴルフクラブを手にしたまま、忌々しげに深く息を吐いた。
自分の脚をさすりながら、目の前に置かれたままのボールを睨む。

「だから嫌いなのよ、こんなスポーツ。どうしてこの靴下みたいなのにコレが当たるワケ?」
「ははっ、それは僕の方が訊きたいよ、なんでボールじゃなくて自分の脚が打てるワケ?」
彼女のゴルフの才能は、皆無だ。
いや、コレはある意味、才能が有るのかもしれない。

ゴルフの練習を始めること、数時間…彼女が振り上げたクラブはボールには当たらず、彼女自身への攻撃ばかりを繰り返している。
きっとあのズボンの下は、赤紫に変色していることだろう。
可哀想に…まぁ、そんな同情じみたこと、言ったところで殺されそうだけど。
何度失敗しても諦めないその根性だけは、素晴らしいと思ってるよ。
だからさ、そろそろ……

自分の下手さ加減を認めようよ。


次は『認めようよ』でお願いします。
(b^-゜)
No765-02/25 19:05
男/コルト
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「お兄ちゃん、大好きだよ」

僕の目の前にいる、真っ赤に染まったゴルフクラブを持った妹が言う。

「でも仕方ないよね。お兄ちゃんから仕掛けてきたんだもの」
そういって、ゴルフクラブを振り下ろす。それは僕の大腿部に直撃し、何かが折れる音とともに紫色に腫れ上がった。
動くことをあきらめた僕は、ただ妹を見上げる。
僕が部屋に篭もっている間に妹はずいぶん変わってしまったようだ。

「お兄ちゃんは私のこと好き
?」
可愛い微笑みを浮かべながら、ゴルフクラブを振り上げる。

僕は少し悩んで、

「うん」

といった。



ヘイヘイヘーイ!
次はゴルフクラブでお願いします
No764-02/25 13:19
女/Dyuo
CA37-qlSCItH2
彼方に消えた私の叫びは、彼の元へ届いたのだろうか?
遠く霞む彼の背中が、一瞬だけ私を振り返った様な気がする。
バカだ、私は。
聞こえていないで欲しいと願う一方で、聞こえていて欲しいと願っているなんて…矛盾するにも程がある。

私はその場にうずくまって、込み上げる嗚咽を必死に抑えた。
泣いてはいけない。
彼を困らせる訳にはいかない。
本来ならこの想いは、絶対に口に出してはならなかった。
誰よりも近くにいて、そばにいて。感じるこの想いが許されないことは、誰よりもよく理解している。
それなのに私は、想いが溢れてしまうのを止められなかった。

想いだけで突っ走れたら、どんなに良いだろう。
思いの丈を全部吐き出せたなら、どんなに楽だろう。
そんな事は考えるだけ無駄だけど、つい、今日みたいに叫びたくなる時もある。
「大好きだよ、お兄ちゃん」って……


次は『お兄ちゃん』でお願いします。
(*^-^)b
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