斬魔刀 1
斬魔刀(ざんまとう)、それはあらゆる魔物を打ち払う力を秘め、
なおかつ、これを手にすれば天竺、唐、日ノ本を支配できるとも噂され、
そのため、この刀をめぐって数多くの血が流れたが、
次第に斬魔刀の事は忘れ去られていった。
斬魔刀の「ざ」の字も噂されなくなって久しく、この刀を手に旅を続ける男がいた。
男の名は稲墨七左衛門。
「全く、血生臭い世の中になっちまったもんだな。」
七左衛門は飯さえあれば、他には何も要らぬという風変わりな男だが、
「おい、待ちな。」
七左衛門が旅の女を取り囲んでいる山賊達を咎めると、
「何だ、てめえは?」
すかさず鞘も抜かずに打ち据えてしまい、
「く、くそ。」
山賊がなおも刀を抜いて抵抗しようとすると、
「この刀の錆になりたくなかったら、とっとどっかに行きな。」
斬魔刀を軽く振ると、山賊達の後ろにあった岩に切れ目が走り、
「ば、化け物だ。」