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近接戦闘特化魔法使い
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近接戦闘特化魔法使い 1

 冬の風が毎年のことだけど肌を切り裂くほどに痛い。冷たいというレベルを超えた寒風に両手を抱えるように抱きながら、俺はうめく。
 「まだかよ」
 今、俺がいるのは雪の積もった草原。銀世界という言葉は綺麗だが、簡単にいえば銀以外が生きていけない世界と言う意味もある。
 まさに死の世界だ。その中で、隣にいる今回の同僚はニタニタ笑いながら、雪の上に寝そべって俺が寒がってる様子を笑っている。
「きつそうだねぇ」
「そっちは楽そうだな」
「そりゃねぇ、ボクのようなエレメント操作型だったら周りの温度を調節ぐらい簡単だもん」
「なら、その範囲を広げて、俺まで入れさせろよ」
「いやだよ、自分の肌の部分を調節するのなら、殆ど無意識でできるけど、範囲広げると疲れるし、下手すりゃ炎上するもん」
「使えねー」
 俺が舌打ちするが、相棒はニタニタと笑ったまま雪に寝そべってる。ちなみに相棒はボクを一人称を使ってるが女だ。正確にいえば女の子といえる年齢、14歳。ちなみに俺は21歳。タメ口かよ、と前は文句言ってたが、もう諦めた。
 ちなみに風貌も変わってる。
燃え盛る炎のような長い髪、精霊やら神に愛された奴は体の一部がその影響を受けるらしい、こいつもそう。いや、神に寵愛されまくって人外化した怪物《大炎譲》水無月焔子。
 元々、水の一族だったのにその中から生まれた炎の子。それも最上級ってことで色々あったらしい。まぁ知らんし、語ろうともせんから、下手に詮索するべきでもないんだろうけど。
 実際、こいつの能力はすげえ。近寄らないといけない俺のパートナーとしては充分すぎる。むしろ、組織からは解約しろといわれるらしいが、なぜか、俺と一緒に仕事を続けるという今がおかしいのか。
「ま、いっか。それよりも、さみぃ・・・」
 ガクガクブルブルと震える俺に哀れみの目線を向けながらも一切、暖めようとしない相棒にいらつきついてると、ふと周りに気配が徐々に集まってきてるのを感じた。
「なんだ?」
 目を凝らす。降り注ぐ大雪で視界は塞がっているが、それを魔術で調節してみる。白い毛皮で迷彩になっているが見えたのは狼。一匹二匹じゃない。
「ここら辺は行商人が通らないって言われたが、その理由がこれか」
「雪狼(スノーウルフ)。どっかの生体系の魔法使いの産物が野生化しただろうなー」
「追い払うか」
「そうだけど、リーダー潰さないと相手まず逃げないと思うよ」
「んじゃリーダー潰せばいいじゃねぇか」
 俺はゆっくりと冷えた体をほぐすように動かし、拳を握り締め、構える。
「私も手伝おうか」
「いらね」
 相棒の焔子に軽く返事すると同時に俺は飛び出す。一気に縮まる距離。
 かなりの速度で飛びこんだ俺は傍にいた雪狼の腹をけり上げる。蹴り飛ばされる雪狼だが、空中で体制を整えて着地した。ほんらいなら内臓破裂してもおかしくない打撃だったのだが、さすが対戦車用に作られた魔道生物なだけある。
 しかし、次の瞬間、地面に着地した雪狼が悶絶しながら血を吐いて地面に倒れる。
 「やっぱ人造物だって爆打に弱いな」
 俺は威力に納得して、残りの雪狼を眺め、息吹――呼吸法によって体内の魔力を練り上げる。
 【爆打】文字通り、爆発する打撃。
 打撃の瞬間に相手の体内に練り上げた圧縮魔力を打ち込む。打ち込まれた圧縮魔力は相手の体内の魔力と衝突、その衝突により魔力は拡散、相手の体内へと見えざる衝撃爆発となってズタボロに砕く。
 魔力を持っている存在ほどその衝撃の威力は高い。文字通り、致命傷になるほど。
 「さてと、どいつがリーダーだ?」

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