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史上最強の王女
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史上最強の王女 4

「いや、しかし姫様がご無事で本当に良かったですな」
「全くです。姫様は我が国の希望ですからな」
周りの者達は口々にクリスの無事を喜んだ。半分は社交辞令だろうが、幼い子供の身を素直に案じるのは人として当然の情であろう。
クリスは振り返って男に尋ねた。
「あの、私は一体どうしてこんな事になったのですか?」
「何だ、覚えてないのかい?お前はパーティーの会場で浮かれ騒いで、床に落ちていたバナナの皮を踏んづけて転倒し、階段から転げ落ちて意識を失ったんじゃないか」
「……」
クリスは言葉が無かった。今時バナナの皮で転倒など喜劇にもならない。
「陛下、姫様もこの通りご無事でしたし、そろそろお戻りになりませんと…」
「む…そうだな」
燕尾服の男がクリスの父親らしき男に話しかける。
(陛下だと!?この男、君主なのか?そう言えば皆さっきから私の事を“姫”と呼んでいたし…一体どこの国だ?)
考え込むクリスに男は声をかけた。
「クリス、パパはもう行かなきゃならない。お前はどうする?」
「わ…私はまだ気分が優れませんので、もう少し休んでいます…」
「そうか、じゃあパパは行くよ。ヘレン、マリー、クリスを頼んだ」
「「はい、陛下」」
そう言うと二人のメイドは男に向かって恭しく一礼したのであった。

「話がある…」
皆が部屋を後にし、クリスとメイド2人の計3人だけが残った所でクリスは口を開いた。
「ど…どうしたんですか、姫様?妙に改まったりして…」
マリーは笑いを堪えるような顔で、一方ヘレンは至極真面目…それでいて優しく包み込むような表情で言った。
「これ、マリー。姫様をおちょくるような物言いはお止めなさい。さぁ姫様、一体どうなさいましたか?」
「うむ、実はな…信じられないかも知れんが…いや、信じろという方が難しいかも知れん。私自身、この状況を良く飲み込めていないし…」
「一体何なんですか?今日の姫様、妙に回りくどいですよ。口調も何だか大人びてるし…」
訝しげな表情でボヤくマリー。
「いや、何と説明して良いか私にも判らんのだ…」
「大丈夫ですよ。姫様の想いを素直に言葉にして表現してくだされば…」
ヘレンのその言葉にクリスは少し気が楽になった。おそらくこのメイドは、このクリスという少女の良き理解者だったのだろう。
「ありがとう、ヘレン…ならば単刀直入に言わせてもらおう。私は君達の知っているクリスという娘ではない。ヘルシア共和国陸軍少佐クリス・リデルという者だ…」
クリスは全てを話した。自分は戦場で命を落としたはずであったが、この部屋で同名の別人の少女として目覚めた事…。
「……」
「……」
二人のメイドはキョトンとした顔でその話を聞いており、クリスが話し終わった後も暫く何とも言えずにいた。

「…やはり…」
最初に沈黙を破ったのはクリスだった。
「…やはり信じられないだろうなぁ…。突然こんな話をしても…」
「いやぁ…あの…その…何と言うか…はぁ…」
マリーはとりあえず何か言おうとしたが考えがまとまらないようだ。
一方、ヘレンの方は、しっかりとした口調で言った。
「私は姫様の…いえ、あなたの言葉を信じます、リデルさん」
「えぇ!?先輩…」
その言葉を聞いて驚くマリーにヘレンは言った。
「マリー、私はずっと姫様のお側にお仕えして来て、姫様の事なら国中の誰よりも良く知っているつもりよ。だからはっきりと分かる…この人は姫様ではないわ」
「…え?えぇ!?じゃ…じゃあ本当に姫様の中身が…その…リデルさんっていう人と入れ代わっちゃったって言うんですかぁ!?」

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