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史上最強の王女
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史上最強の王女 1

「来るぞっ!!敵の砲撃だっ!!伏せろぉーっ!!!」
ひゅるるるるる〜…ズドォーンッ!!!!
「ギャアーッ!!!」
「グアァーッ!!?」
鼓膜が裂けるような爆音と地響き…それに続いて兵士達の悲鳴が辺りに響き渡る。
ここは戦場、最前線だ。
南の商業大国ヘルシア共和国と北の軍事大国ドストニア帝国の国境での小競り合いから始まった戦争は、一週間で終わるだろうという将軍達の予想を大幅に上回り、もう一年以上も続いていた。
「砲撃が止んだぞ!!敵の突撃に備えろーっ!!!」
この血なまぐさい戦場には相応しくない凛とした高い声が響く。
声の主はヘルシア陸軍の制服に身を包んだ美しい女性だ。
クリス・リデル少佐、年は25。
まだ若いが数々の戦線で戦果を上げ、多くの勲章に輝く英雄である。
「ん…?」
ふとクリスは足元に光り輝く何かを見つけた。それは銀製のペンダントであった。
落ちた衝撃で留め金が壊れたらしく、クリスが拾い上げるとフタが開いた。中にあったのは一人の女性の写真だった。
「あ…それは…!!」
一人の若い兵士が慌ててクリスの元に駆け寄る。
「…貴様の物か?」
「は…はい!故郷に残して来た婚約者です…。式を挙げる前に戦争が始まって徴兵されてしまいましたが…」
「馬鹿者!!誰がそんな事を聞いた!?戦場に恋人の写真を持って来るなど、気が弛んでいる証拠だ!!」
「も…申し訳ありません!!」
そこまで言うとクリスはフッと微笑み、兵士にペンダントを手渡して言った。
「…もう無くすんじゃないぞ」
「あ…はい!ありがとうございま…」
パァーン!
その言葉は一発の銃声によって遮られた。兵士の体がバタリと倒れる。
「少佐、敵です!!」
見ると、彼方の戦場に漂う硝煙の中にピカピカと光る無数の銃剣と人影が見える。
それはワァーッという叫び声を上げながら突っ込んで来る。
何千何百の叫び声に辺りの空気も震える。
「…来たな!撃てぇーっ!!!」
兵士達はクリスの命令で、その人影に向かって一斉に銃を放つ。
何人かはバタバタと倒れたが、その勢いは止まらない。
「怯むなぁっ!!この陣地は何としてでも死守するのだ!!!」
その時、何かがクリスの頭上をかすめて後ろに積んである弾薬の近くに落ちた。
「…っ!!!?」
それは手榴弾だった。
あそこで爆発したら味方は大被害だ。だが拾い上げて投げ返す時間は無い。
彼女は一瞬でそう判断し、手榴弾の方へ駆け寄ると、その上に自ら覆い被さった。
「少佐ぁーっ!!!!」
部下が自分を呼ぶ声がする。
それがクリスが最期に認識した事だった。
次の瞬間、彼女の意識はプッツリと途絶えた。

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