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Hidden
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Hidden 1

刀身から血が滴る。
もとはといえば、目の前の男の身体を巡っていたものも、今では行き場を探すしたように腹ばいの男下から這い出している。
徐々にその範囲を拡げていくその水溜まりは紅い。
余りにも紅すぎる。
僅かに首を巡らせると、同じように紅い湖に沈む小さな身体が視界に収まる。
紅い。

解けた黄色のリボンも、純白の靴下も、淡い水色のワンピースも。
俺は天を仰ぐ。白い天井が俺を睨み返す。
あらゆることに意味がある、と人は言う。
ならば。
ならば果たして、俺のしていることに意味はあるのだろうか。
小さな部屋に横たわった二人は、俺に何も教えてはくれなかった。



──3年後。

「…か。…ぇ…すか」
ふわふわと浮くような心地の中、頭上から声が降ってきているのを遠退いた意識の中で自覚した。うるさいな。

パーンッ。

渇いた音が鼓膜を揺らすのとほぼ同時に、俺は後頭部の痛みで文字通り跳ね起きた。反動で椅子がガタン、という派手な音を立てた。
「イテェな…」
「藤森飛鳥、いつまで寝てるき?」
見上げるとそこには眼鏡をかけた金髪の女がいる、彼女の青い目を見ていると吸い込まれそうな気がする。
「試験だけで点数がつくわけじゃないわよ?授業態度の覧、期待しておいて頂戴」
見た目は良いんだが、いつも口が悪い先生だな…。
俺の頭を叩いたであろう丸められた教科書が、先生の手にしっかりと握られていた。
先生は俺が昔殺してしまった女の子によく似ている。他人の空似というのは個人情報を調べたから間違いない、しかしよく似ている…
「おい、何ボーっとしてんだ?」
またコイツか…、声を掛けてきたのは隣りの席の光秀だ。父親が歴史好きで光秀という名前をつけられたらしい。
「なぁ前から思ってたんだけど、いつも寝てるくせに何でお前頭良いんだ?」
「家庭教師…」
勿論嘘だ、こうでも言わないと光秀はしつこい、そしてうるさいのだ。

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