（ファイトだけで、勝てるかッ！）
　　　　　　　　　　　ジークは心の中で思い付く限りの桃樹に対する呪詛を吐いた。
だが、そんなことなど露知らず、相手は切りかかってくる。
その爪をグラムで防いだ。重い一撃。何とかそれを弾き、横にグラムを滑らせる。
しかし、ラプトルの鎧の様な皮膚に阻まれ、刃は肉へと届かない。
　　　　　　　　　　　「桃樹！低級でいいから、閃光魔法一発ぐらい出せないのか！？」
「無理！ファイト！」
　　　　　　　　　　　答えはあっさりと帰ってきた。
　　　　　　　　　　　「………」
　　　　　　　　　　　最早、何も言えなかった…
　　　　　　　　　　　（落ち着け…何か…何かあるはずだ…弱点とか、パターンとか…）
　　　　　　　　　　　思考を切替え、相手の全身を見渡す様にグラム構える。だが、動きは素早く、攻撃も防御もバランスがとれている。
　　　　　　　　　　　（しかし…ホント、リアルなゲームだ…）
　　　　　　　　　　　質感十分に自分を見据えるラプトルを見て、ジークは思った。
　　　　　　　　　　　（待てよ…リアルなゲームだからこそ…）
　　　　　　　　　　　あることに気付いたジークはグラムをさらに強く握り締めた。
一発逆転を狙う為にグラムを肩の高さまで持ち上げ水平に構える。
ジークは地を蹴った。ラプトルもほぼ同時に飛び出したが、僅かにジークの方が早かった。
瞬時に懐に潜り込むと、ラプトルの関節部に刃を突き立てた。
ラプトルが甲高い悲鳴を上げて倒れ込む。
　　　　　　　　　　　（よし！思った通り！）
　　　　　　　　　　　人間型なら関節部は弱いというジークの判断が見事に的中した。
そのままグラムを引き抜き、ラプトルの喉元へ一撃。断末魔の悲鳴を上げ、ラプトルは息絶えた…

　
「よし…」
「やるねジーク」
　
しかしまだ問題はある。何故かというとラプトルの好戦的な習性と、一般に人より足が早い事により、出会えば戦いは避けられないからである。
　
「慎重に戻らないとな…」