THE ENDLESS 46
間合いを切った颯葉の口から苦悶の声が漏れる。
だが、それはすぐに変化した。
「くくっ…あっはははは!」
笑い声。いかにも楽しいという笑い声。
「如何なされた?」
アラビスが怪訝そうな顔で聞く。
「いや何、本気になれると思ったら、楽しくてね♪久々だ、私は今楽しんでいる…」
そう言うと、鬼丸の刃を自らの手に当て、スゥーと引いた。
その途端…
ドクンッ!
鬼丸が脈動した。それに合わせるかの如く蜘蛛切りまでもが脈動し始めた。
「コイツ等は妖刀でね。主人の血を吸わせると本気になるんだ」
颯葉は刀を再び構える。
「その分体力は削られるんだが…」
そう言い残し、颯葉の姿が風となった。その風はアラビスに向かって吹き荒れる。
全てが違った。速さも、力も。
「ぐわぁああっ!!」
風の中、血飛沫が舞い踊る。アラビスのシャムシールが弾かれた。
その途端、荒々しい風が止んだ。アラビスの首筋にピタリと刃が触れている。不気味な暖かさを感じた。
「殺らないのですか?」
アラビスが問う。
「ああ」
颯葉はそれに短く答えた。
「何故?」
「私の気紛れ…いや、お前は殺すのには惜しい」
刀を鞘に納めながら言った。
「剣姫はなかなか酔狂であられる」
アラビスもシャムシールを拾い、納めた。
「修行し直して参ります」
アラビスはそれだけを言い、颯葉に背を向けて去っていった。