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カダクロス
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カダクロス 14

「聞いたことがある・・・でも本当にやった人がいるなんて。でもそれと何の関係が?」先ほどまで静かに聞いていたフィルが口を挟む。
「かつてウォルド王はカダクロスを得るために此処に立ち寄ってると思う。6使徒といえどもカダクロスのありかは知らなかったからだ。そこで親友の死とこの武具を見たし、マーリス様の末路も知った。知った上でカダクロスを諦めてまで何もせずその場を去った」
「しかしなぁ・・・なぜそのままにしたんだ?ますます不思議になってきたぞ」腕組みしていたギアースの言葉にルカは一呼吸おいてから話し始めた。
「ウォルド王は、この武具を着けれる者がレイスと対峙するべきと思い放置したんたろうと思う。・・・もしかしたらフェイムフェイス卿がこの事態を予測していたか、神からの啓示があったのかもしれない・・・剣に魂を込めれば絶命するわけだから余程の事がないとできないしね」

それ以上は考えても仕方がないことだった…今はとにかくマーリスを救うのが先決だ。


一同はしばらく歩いた 途中只の一度も魔物と出くわすこともなく。   その間ルカは考え続けていた―どうすれば彼女…レイスと成り果てたマーリスを救えるのか… この剣が鍵となるのは 分かっている。問題はどう使うか…だ。それに夫は剣に魂が、だが子供は? ドンっ…前を歩いていたフィルにぶつかる。 「デカいのがいたぞ…! 気ぃ抜くなよ」ギアースが呟く…
眼前には小山のような体躯の獣…頭には角があり背中にはその大きな体には不釣り合いな小さな翼。 「……ドラゴン?」
フィルの足は止まっている。そこにルカはぶつかったのだ。そしてそのドラゴンの陰にはグールがそれも鎧を着込んだ大柄なグール。その手にはまたも大きな剣。 「…あいつは俺がやる。」ギアースが戦斧を正眼に構える、まるで剣を持つかのように。 つづいてルカが剣を抜き放ったその時、ドラゴンが、いやドラゴンゾンビは唸りをあげて何か黒い煙を吐き出した! 「…っ毒の息!それも強力な!」
・・・ドラゴン。それは最強の生物とも言われ、上位の竜は神すら焼き尽くす炎を吐いたといわれている。目の前にいる物は、最も小型で低級なモノがゾンビとなったのであるがそれでも強力な力を持つ事は変わらない。その爪は鉄をも引き裂き、強力なブレスは全てを溶かすアシッドブレスなのだ。
横にいるグールは、ギアースよりも大きく頭には小さな角が生えている。こちらも巨人族の中では最も小柄だが強暴なオーガのなれの果てであった。小柄と言えどもオーガのパワーは人間では対抗できる代物ではないのだ。
こんな怪物の生命力まで奪ってしまうとは・・・レイスの力がいかに強力であるかを物語っていた。ルカは緊張しながらも剣を構えドラゴンゾンビと対峙する。その横では凄まじい音を立て、鉄と鉄をぶつけ合うギアースとグールの姿があった。

大上段に構えたグールは絶叫を上げ、ギアースに襲い掛かる。疲れと痛みを知らぬ不死の身体から繰り出される斬撃は、暴風のようにギアースに襲い掛かり、強烈な衝撃と共に鈍い痛みと骨と鉄が軋む音を立てる。しかし、この凶悪な暴風の中でギアースは、己の心が熱く燃え上がり、身体中の筋肉が喜びの声を上げるのを感じていた・・・ギアースの戦士としての本能が眠りから覚めようとしていたのだ。そしてギアースは凄惨な笑みを浮かべると、斬撃の嵐に耐えながら腹の底に気を練っていく。
「どうりゃーあぁー・・・」諸国から『暴風』と称された裂帛の気合を腹の底から吐き出し、ギアースは身体ごとグールに戦斧をブチかます。さしものグールも吹き飛ばされるが、痛みの無い不死の者はゆらりと起き上がったのである。ギアースは戦斧を構えなおし力を溜める。顔を赤くし、腕や頭に青筋を立てるその姿は鬼神そのものに見える。そしてグールも構えを取ると、ギアース目掛け雄叫びを上げながら飛び掛かったのだ。

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