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ドラゴンクエスト[〜それから〜
その他リレー小説 - 二次創作

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ドラゴンクエスト[〜それから〜 4

ただ杖は、我がもの顔でそこに居座っていた。エイクの心臓をバクバクさせる…龍の気持ち悪い眼。こちらを向いている気がしたがあえて無視するしかなかった。
あまりにも気持ちが悪かった。
近寄りたくもなかった。
が、そんなこと言ってたら、完全に仲間に迷惑をかけることになるだろう。

エイクはまるでこの世の中で一番気持ちの悪い物を見る時の顔をしながら、杖に近付いた。
異臭がする…様な気がした。
まぁ、嗅覚を刺激する臭いではなかったが、微かな臭いがしたような気がした。

数日前まであった死体臭かもしれない。
あの遺体の中には顔馴染みも、厳しかった先輩も居た。

みんな死んだ。

一応弔ったが、やはり罪悪感が残った。
みんな命がけでミーティアを守ったのに。

ミーティアは居ない、それに。
多くの犠牲が伴われた。

俺があの場に居たら俺は死んでいた。
死んでいた?

エイクはまだ忌々しい血の跡が残る赤い絨毯を見据えて、死人に何かを告げた。

助けられたのは俺だな、でも
お前らが守れなかったミーティアはきっと
助け出すから。

ミーティアだけは…。
赤い絨毯に新しい跡が残る…。

エイクは涙を拭い、杖を睨む。
許さない。

許さない!!

杖を睨みつけたまま、
憎悪を燃やす。

杖の表情は変わらないけど。
ただそこに有るだけだ。

「ちょっと〜エイク〜何してんのよ。」

扉の向こうからゼシカの声が聞こえてきた。
「ゼシカ!こっちだ!」

ゼシカのカツカツと歩く音が響く。
扉の前まで来て、ゼシカはそっと戸を開けた。
「エイクったらこんなとこで何してたの?」ゼシカはもうあの燃えた目をしていなかったので一安心。

現状を伝えることに。「ここで…ミーティアが拐われたんだ。」
「その杖に?」
「さぁ、まだ何も分からないよ。」
「じゃあミーティアが拐われたなんて、どうして分かったの?」
「根拠はないよ。」
ゼシカがムッと顔を歪めようとしたが
エイクの悲哀に満ちた表情に気付き、
「ふぅん。」
としか言えなかった。暫く、ゼシカはエイクの姿を見るしか出来なかった。
「でも全然手掛りがないから…なァ、
ラプソーンの時みたいに情報を集めないと。」
エイクがいつもみたいに話してくれてゼシカの表情が和らいだ。
「うん。」
ゼシカは可愛らしい笑みを浮かべた。
「俺が未熟だからかな?」
ゼシカの和らいだ表情を一瞬で打ち消すその言葉。
未熟?
未熟だからじゃないよ。
「俺が一人前の隊長ならば、ミーティアは拐われなかった、こんな事なんかおこらなかったのに…。」

うつ向こうとエイクは首を曲げようとした…が、その前にゼシカのパンチがエイクの頬を直撃していた。
「弱音はいてんじゃない!!あなたそれでも近衛隊長!?昇任したんでしょ!あなたのその強さを王は認めたのよ!!
その強さで、どうして未熟なんて言うの!!」

ゼシカは思う…

貴方が私の中で一番強いの…。

なのにどうして裏切るの?

ゼシカは声にならない哀しみを、エイクにぶつけた。

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