今の人間が生まれ、進化する前。地球では今と同じように人間達が暮らし、そして争っていた。今は「無」き人間達の物語を、始めよう―
マラナは目を覚ますと、砲弾の音と人間の怒号が随分と遠くに聞こえる事に驚いた。いつのまにか戦地を逃れ、この場で力尽きて眠ってしまったらしい。相変わらずどこを見渡しても青く繁った木々と、死体しかない森。マラナは戦いから逃れほっとする一方、遠雷のように響く戦の音に不可解な疎外感も感じていた。(やはり女の私に戦争など無理だったのだ。)草の上で仰向けになったまま、マラナは悔しさに唇を噛んだ。