THE ENDLESS 77
「シェンザ蹴落として幹部になる予定やったんですけど」
喋りながら鞦韆は、近くにあった椅子にどっかと座った。
「クゼンさん、こいつ倒すの黙って見ててくれるなんて事は…」
「は?負けんのはてめぇだろ」
アジェストが睨み付ける。
「それはさておき、貴方に提案があります」
「何ですか?」
イラつき気味のアジェストを尻目に、クゼンはとうに冷静さを取り戻していた。
「私達のギルドに入れば良いんですよ」
「……」
「あー、マスター?」
「はい」
「『はい』じゃねぇよ!あいつとどういう関係なのかは知らねぇけど、いきなりギルド襲ってきた奴を普通に勧誘すんな!!」
大変な剣幕であるが、当然の反応とも言える。クゼンは涼しい顔をしているが。
「まあまあ、鞦韆君の意見も聞きましょうよ」
鞦韆はというと、制服の袖をいじっていた。アジェストもこんな異様な無視のされ方は初めてに違いない。
「確かに、同じギルドでポスト奪うより、ギルド抜けて直接叩く方が嫌がらせになるなぁ…」
鞦韆が顔を上げて言った。
「シェンザって人の事ですか?」
頷いた。
「あいつ性格悪いから、味方からも結構嫌われてますよ」
「で、どうなんですか?入ってくれますか?」
鞦韆は数十秒悩んだ末、答を出した。
「いいですけど…半月にも義理があります。寝返る前に、最後の任務…『アジェスト撃破』はしっかり果たさせて貰います」
鞦韆は立ち上がり、再びサーベルを抜いた。アジェストは宝剣を構えた。クゼンに焦りが戻った。
戦闘が始まった。クゼンは隙あらば割って入ろうと見ているが、なかなか機会は訪れない。
「てめぇ…本気じゃねぇだろ」
「お前こそ全力でかかって来いや」
戦闘中に会話する事自体、全力で戦っていない証拠なのだが。実際今は手を休めているのだが、クゼンも割り込めない空気が漂っていた。
「いいのか?そんな事言って」
ザワ…そんな擬態語が音として聞こえて来そうだ。
「そっちこそ、今のうちにこの世界にお別れ言っとかんでええんか?」
「あまり調子に乗ると痛い目見るぜ…」
アジェストは武器を戟に替えるべく宝剣を収めた。ふと見れば鞦韆も同じ事をしている。
(こいつも覚醒型か…手の内を隠すのが上手い奴だ)
少し時間は戻って外の話。長い柄の先に直角に刃の付いている武器、戈(カ)を持った男と、鉄の爪を装備したスヴェルクが戦っていた。