THE ENDLESS 76
だが、事態は二人の事などお構いなしで進展していく。
「外見ろよ…最高のタイミングだ」
アジェストの言葉に皆が窓に殺到する。
「わわ…友好的な表情を浮かべた方々が沢山……」
「あ、俺今日暴れる気分じゃないからパスな。一人位生け捕りにすんの忘れんなよ」
「はぁ!?」
ジークは思わず声をあげてしまった。それもその筈、まだ味方はジーク含め七人しかいなかったのだ。
「良いでしょう。行きましょう四人共……君も来ますか?」
スヴェルクは顎に手をやって悩んだ。いや、悩んだふりかも知れない。
「勿論行きます。期待してもらっても良いですよ?」
少々偉そうに言うその顔には自信が満ちていた。それを見て、クゼンが言う。
「心配しなくても君達が危ない時は助けてあげますよ」
「……早く行けよ!」
「はいはい」
アジェストの声に追われ、六人は敵の待つ外へ飛び出した。
敵は四人。ジークが結構少ないなどと思っていると、クゼンが意外な事を口にした。
「ジーク君桃樹さん。ここは退いて下さい」
「「え?」」
「わざわざ危険を大きくする必要はありません…あの二人の実力も把握しておきたいですしね」
「……」
ジークも桃樹も納得できなかったが、反論している時間はなかった。
敵の一人がクゼンに突進して来たのだ。
「一人で私に立ち向かうつもりですか?利口とは言い難いですね…」
瞬時に敵の額に打ち込んだ水弾が砕け、霧となっていた。
更にクゼンが畳み掛けるように槍を突き出すと、先程の衝撃でくらついている敵は、いとも容易く串刺しになった。
「流石ですね!」
ジークが興奮しながら言った。しかしクゼンの目は既に他の三人を見据えていた。スヴェルク以外は有利に見える。
「おかしいですね…」
「何が?」
桃樹が首を傾げる。
「敵が弱すぎます」
クゼンがそう言った瞬間、三人の背後でアジェストが怒鳴る声がした。
「何だ!?」
「私が行きます。君達はここで皆を見ていて下さい」
クゼンは早口でそれだけ言
うと、急ぎ中へ向かった。
「…アジェスト君?」
クゼンが状況を理解するのにあまり時間はかからなかった。
明治・大正頃の憲兵の様な格好をした侵入者とアジェストが対峙している。そして壁には侵入者が開けたと思しき穴があった。
不意に侵入者が口を開いた。
「クゼンさん久し振り。俺の事覚えてる?」
「君…見覚えがありますよ。そしてその関西訛り…鞦韆…でしたっけ」
「あ?マスターこいつ知ってんの?」
戸惑うアジェスト。鞦韆と呼ばれた侵入者は手にしていたサーベルを収めた。