カイン 3
「多くの兵が死んだ。敵も味方も」
「死んでいった人達はけして我らを許さないだろう」
そう言ったっきりファリスは黙った。ただ床を見つめて。
「ファリス様はなぜ戦うのですか?」
ファリスは顔をあげた。真っ直ぐに彼の目を見て
「そこに争いがあるからだよ」
そう静かに答えた。
「ファリス様!!」
廊下の向こうから一人の男が走ってくる。
ファリスの近衛体調のアレンだ。
「見つかってしまったようだ」
ファリスはカインに笑いかけると、アレンの方に歩いて行った。
カインはその後ろ姿をただ眺めている。
カインはファリスとアレンが仲良く話しているのを、嫉妬の眼差しで見つめる。
年上で、背が高く紳士で、剣の歳は国一だと噂されるアレンをファリスは愛している。
『なぜ戦いたい?』
数刻前のルードの言葉が脳裏に浮かぶ。
「僕はただ、あなたを守りたい..」
カインは小さく呟いた。その言葉は風に流されて誰にも届かなかった。
*
その日の王宮は喜びに満ち溢れ
故郷に帰れたことを
愛しい人が無事に帰って来たことを
母国の勝利を...
神に感謝し、誰もが浮かれ騒いでいた。
しかし、この夜
国民の誰もが忘れられない悪夢の夜となる。
夜中。
カインは鳴り響く警報の音に目を覚ました。
もう夜明けも近い時刻だと言うのに、外が妙に騒がしい。
窓の外を見ると、小さな枠の中の景色は真っ赤に燃え上がっていた。
燃えてる...そう気付いたときカインはベッドから跳ね起きた。
軽く着替え廊下に出る。