ドラゴンクエスト[〜それから〜 2
「……疲れてるのかな。」
俺は自分に言い聞かせるようにひとりごちた。
今は、「疲労」という言葉に総てを擦り付けたかった。
そうするしか、無かった。
耳に届くピアノがふと止まった。
…いつもここでつまづくんだ、ミーティアは。
そして、「もう、どうしてかしら。」ってピアノに八つ当たりするだろう。
幼い頃から、変わらない景色。
ずっとずっと、守っていきたい。
だから、悲しい曲はよしてくれよ。
俺は城下町の警備に出た。
…というのは建前で、散歩みたいなもんだ。
俺の中に鬱屈したものを、太陽なら晴らしてくれるんじゃないかと思ったからだ。
エイクの上空から、黒い雨が落ちてきた。
黒い…というよりかもう少し明るい色…。
その色をエイクは何処かで見ていた。
「血…。」
雷鳴が血を震えさした。
エイクは無我夢中に走り出す。
ミーティア…
ミーティア…
ミーティア!!
胸を貫く…絶望。
ミーティアが居ない気がした。
「!!」
エイクはミーティアの部屋の戸を開けた。
真新しい、血。
辺りには、兵士がいろんな形を描きながら。
死んでいる。
その中には、顔馴染みもいた。
ミーティア…
無事でいてくれ!!
ミーティアの部屋を進んで行くと、
そこにはミーティアがいた。
死んでいない。
「ミーティア!!」
しかし、彼女は横たわり、確実に意識を失いかけていた。
「エイク…。」
静かな声で名前を呼んだ。
何故?
っどうして君を守れなかった?
いつも側にいて、君のことはなんだって知っていた。
ミーティア?
効くかどうか、分からないけど。
ベホマ!
ミーティアは淡い光に包まれた…。
が。
光が消えた時、ミーティアはもう居なかった。
「!?」
初めは驚かざるをえなかったが、その思考を打ち消す物が…。
ミーティアが居た所に、杖。
ラプソーン?
ではなかった。
その杖は、龍で飾られている杖だった。
なんだ、この杖は。
その時、描かれていた龍の眼がギラリと光った。
脳裏に浮かぶ…
お父さん!?
「くっ…俺、どうしたんだろ?」
膝をつき、頭を抑え屈む。
お父さんなんて…
いらない…
俺には。
ミーティアだけいればよかったのに…。
エイクは自らの目から溢れる…何かを拭う。
悲しみではなく…
怒り…。
エイクは立ち上がった。
「ミーティア、必ず、助けに行くよ。」
決意を胸に秘めた。
目の何かはもうない。
しかし…。
エイクの眼は、まるで龍のような…そんな眼だった。