背伸びしたいお年頃。 18
「見晴らしいいだろ?…僕のお気に入りの場所なんだぜ…」
「そ、それはもちろんそうだけど…こんな場所が自分の家の敷地内にあるなんて、翼さんのお家って一体全体何者なのよ?…」
結菜にとってはもう景色どころでは無かった…
「結菜ちゃんは知っているかな?…高梨家って…」
「高梨…」
なんか記憶にある、でも何だったか覚えてない。
テレビで見るような有名な人だっけ?でも翼さんが…
正直ちょっと混乱する。
「まあ、うちはすっごく金持ちでこんな別荘が何軒もあるようなもんさ」
「へぇ…」
「僕はどうしようもないダメ人間だけどさ」
「そんなこと無いですよ…翼さんはダメ人間なんかじゃありませんよ…」
「ありがとう…結菜ちゃんは優しいんだね…」
「ううん…お世辞で言っている訳じゃないですよ…私には翼さんがそんな風には見えませんから…」
「それはこんな車や、立派な家を見たからなんじゃないのか?…」
「確かにカッコイイ車や凄い家には驚きましたけど、それと翼さんとは別のことですから…」
「結菜ちゃん…」
この子は年齢以上に考えが大人だ、翼はそう思い、その気持ちに感謝した。
そして、彼女への愛おしさも余計に感じた。
翼は車から降り、結菜をエスコートする。
「僕の部屋に」
「翼さんの…?」
「お互いに、いい思い出作るために、ね」
シーンと静まり返っった長い廊下を歩く。
「こんな大きな家なのに誰もいないんですか?…」
「いや、僕の食事の世話をしてくれる家政婦はいるさ…今は昼寝でもしてんじゃないかな?…」
「それじゃあご家族は?…」
「親父やお袋は都内の本宅に住んでいるんだ…ここはあくまでも別荘だからね…」