あの頃に戻って、取り戻せ 27
「お母さんも中学生ぐらいから急激に成長したから似たのかも」
「ああ、紫乃はそうだったわねぇ」
感慨深げに母さんが言う。
確かに藍は小学生の頃はそんなに発育が目立つタイプじゃなかった気がする。
むしろ中学生になってドンドン急激に発育していった。
高校になっても成長が止まらず、こんなダイナマイトボディになった訳だ。
「でも・・・私、怖いの」
「どうしたの?」
不意に藍が泣きそうな顔で母さんに抱きつく。
「自分が変わってしまって・・・いなくなりそうな気がするの!」
少し驚いた。
俺がどこか行ってしまうなら分かるが、自分がどこかに行ってしまうと言う感覚・・・
要は自分でも性欲を持て余してる自覚があるのかもしれない。
前の世界の藍はこの時期よりギャル化して行く。
そして一年後には肉食ビッチ化して学校に来なくなっていく。
その肉食ビッチの頃と今がよく似てる感があり、そんな自分に不安を覚えているのかもしれない。
噂によると向こうの世界での紫乃さんの子供になっている子供の1人は、この学校に来なかった時期に妊婦していたと言う噂もあった。
前の世界の結婚式では憑き物が落ちたような穏やかな顔になっていたから、この時期は身体の成長に心が追いついていなかったのかもしれない。
「大丈夫よ・・・ママがずっとついていてあげるから」
「ママっ・・・大好きっ!ママっ!」
母さんにしがみつく藍。
母さんが優しく抱きしめると少し甘える声を出す。
これで何とかなってくれればいいんだけどな・・・
その後、俺と母さんは気まずいながらも湯船へ。
上機嫌の藍を真ん中に三人で浸かる。
小学生の頃に親子3人で余裕で入れた広さだけに、今でもこうやって大人3人で何とか入れている。
そして藍を真ん中にしてるから俺と母さんはそこまで気まずくは無い。
これは藍の行動に感謝していい。
「ママ・・・お願いがあるの・・・」
「なにかしら?」
温まって暫くした頃、藍が母さんに切り出す。
「たっちゃんと私がエッチする所・・・見守って欲しいの!」
訂正・・・
感謝なんて出来ないから勘弁して。
頭を抱えたくなる俺。
だけど・・・
「分かったわ・・・見ててあげるから達弘の赤ちゃん作りなさい」
「ありがとうママ!」
何故そうなる・・・
固く手を握り合う藍と母さん。
何かおかしな方向に行ってる気がして頭がクラクラしてきたが、これは絶対に湯当たりじゃないと思う。
そして・・・
ベッドに寝転ぶ俺。
全裸で向かい合って座る藍と母さん。
その2人の手がしっかりと俺の竿を掴んでいた。
「おじさまと比べてたっちゃんはどうですか?」
「うーん・・・旦那とも数年ご無沙汰だから忘れかけているわ」
藍のズケズケとした質問に若干困り気味の母さん。
でも何故かその手は俺の竿をしごいて動いている。
「愛し合っていた筈なんだけど・・・いつの間にかどちらからともなく誘わなくなってしまったわねぇ・・・」
どこか寂しそうに感じる言葉だった。
仲が悪くは無い両親だけど、そう言えばいつの間にか寝室が別になっていた。
夫婦には色々事情かあって、子供には分からない事があるんだろうとは思う。
「こんなに綺麗なママなのに・・・」
「ありがとう、でも紫乃の方が綺麗じゃない?」
紫乃さんの名前を聞いて藍が顔を曇らせる。
「確かに綺麗だけど……なんか、ちょっと…」
藍の言葉に歯切れが無くなる。
藍と紫乃さんの関係は悪くないと思っていた。
顔立ちといい性格といい藍は紫乃さん似だと母さんも言うくらいなのだが、これはもしかしたら…そうなのか。
あの当時、藍と紫乃さんも関係がよろしく無くて、さらに俺の要因が重なって藍がダメな方向に向かってしまったのだろうか。
「紫乃に、何かあったの?」
母さんの問いかけに、うーんと唸ったのちに藍は少し暗い表情で答えた。
「私の勘違いかもしれないし、それだったら良いんだけど……お母さん、お父さんや私のいない時に違う男の人と会ってるような気がする」
……正直言って可能性は無くは無い。
前回の時は藍がおかしくなって、家庭がおかしくなり、紫乃さんもおかしくなった。と思っていたが、藍がおかしくなる前から既に……という事も無いとは言い切れない。単純にあれだけの女性だから今でもモテるだろうしな。前回ではおよそ一年後に紫乃さんの子供(とされる人物)が生まれている以上、可能性を否定しきれない。
「ま、まさか。気のせいでしょ!」
と母さんが藍の懸念を否定するが、昔の事があるせいかどうにも紫乃さんを信じきれていない様にも見える。
紫乃さんを立ち直らせたあの旦那さんでも前回の人生の時には離婚したという事は余程の事態だったのだろう。勿論、単純に藍がおかしくなって家庭内不和になり其処から離婚へという事かもしれないが。
もし妻子そろって他所の男との遊びに溺れていたとすると流石に仏の様な人物でもキレたり心が折れてしまってもおかしくはない。