あの頃に戻って、取り戻せ 1
その日は同級生の結婚式があった。
「いい式だったなぁ」
「速水さんのウェディングドレス姿、良かったよな」
二次会が終わった後、仲の良かった友人たちと三軒目の店で飲む。
皆よかったとか、楽しい話をしているが、俺だけはそんな気分にはなれなかった。
花嫁―速水藍は、俺がずっと好きだった女の子だったからだ。
家が近所で親同士も親しかった幼馴染。
毎日のように一緒に遊んでて、「将来たっちゃんのお嫁さんになるんだー」と言ってきかなかったあの無邪気な笑顔が、今になってよみがえってきた。泣ける。なんで相手が俺じゃなかったんだ。俺はどこで選択肢を間違えたんだ?現実はエロゲのようにはうまくいかないのはわかっている―でも悔しい。
悔しくて俺は、三軒目の店で浴びるように酒を飲んだ。友人たちの制止も聞かずに飲み続けた。
そのあとの記憶はない。
流石に飲み過ぎた。泥のように眠り続けていた。申し訳ないが、友人たちには迷惑をかけたな――――――
「たっちゃん、たっちゃんってばー」
あれ?この声?何で、藍がいるんだ?
声とともに、身体を揺すられる。
「う、うぅぅぅう………よく寝た………なんかだるい…」
「もう、たっちゃんずーっと寝てたよね?」
「あぁ………………って、えっ!?!?」
ダルい中何とか身体を起こす。
ゆっくり意識の戻る中で、俺はその光景に目を疑った。
場所は学校の教室。
目の前にはセーラー服姿の幼馴染、速水藍。
これは、今、どうなっているのだろう。
まさか寝てる間に学校に連れてかれたわけでは…ないよな。
目の前の藍は、まさか、コスプレしているわけじゃない、よね?一緒に呑んでいたわけでもないのに。
「まだ目が覚めてないのかなぁ?」
藍がさらに顔を近づけた。近い。近すぎだ。
身を起こして藍との距離を置く。
黒板に日付が書かれているのに気づく。
11月22日。今日だ。間違いない。
しかしその上に書かれていたのは………目を疑った。
8年前の、11月22日。
8年前に戻っているのか…….
今から8年前というと、俺たちは17歳、高校2年生。
藍はまだ、結婚したアイツ………サッカー部の後輩……とも付き合っていない時代のはずだ。
「たっちゃん、熱ある?」
「えっ」
藍が額をコツンと当ててきた。こ、コイツ、こんなに積極的に来たっけか?
「んー、ない。たっちゃんが風邪ひくわけもない。大丈夫。よし、帰るよ!」