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あの頃に戻って、取り戻せ
官能リレー小説 - SF

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あの頃に戻って、取り戻せ 20

コイツらだけでなく親しい女子も大半が祝福ムードなのが有り難い。
まぁ、比率にすると大半が無関心なのだが、かなりキツい視線も祝福と同程度は感じていた。
これは藍の魅力から考えると仕方ないと思う。
今朝いきなり結婚宣言ぶちかましたのだが、その話は流石に友人達にも話せないが、藍の性格からすると話が広がりそうな気がする。

ふと藍と視線が合う。
蕩けるように俺を見る視線を見ていると、本気で惚れられてる事に幸せを感じる。
と同時に、背中に電流が走るような感覚があった。

この顔に見覚えがある。
それは後輩との結婚シーンではない。
その時も後輩を見る目は愛があったが、もっと落ち着いていた。

この顔・・・
思い出した。
そして思わず身震いしてしまう。
この顔は、藍がギャル化して男達と夜な夜な遊んでいた頃に男達に媚びていた顔だ。
あの過去の藍は快楽に流されて堕ちて行った訳だが、そこから考えるに今の藍も相当快楽に弱い。
その快楽に弱い藍が快楽を知ってハマってる状況だから、他の男の誘惑に抗いきれない可能性だってある。
あの時のように強引に事に及ぶ男もいる可能性はあるのだ。

今は俺だけにその視線を送っているように見えるからいい。
これで俺が離れたらどうなるか。俺もいつも藍について回っていることはできないのだ。そうなると心配になる。

窓際の席では倉野さんが物憂げな表情で外を見ていた。
そんな姿も絵になる美少女なんだけど、今は複雑な気分だ。

正直、倉野さんをどうにかできはしない。
藍と倉野さんを天秤にかけるなんて出来ない。
もし少しでも倉野さんに心を移して藍を失う事があれば・・・
それこそ耐えれない。

そう考えると後輩の凄さが分かる。
藍がどれだけ堕ちようが他人の子を孕もうが、真っ直ぐに藍を愛して添い遂げる決意を持って結婚まで至った。
男としては全く勝てないぐらい大きい。

その後輩もこの頃から藍を憎からず想っている。
つまり、俺が隙を見せれば俺より遥かにいい男である後輩が藍の隣に居ても不思議ではないのだ。

その後輩だけでなく、藍に惹かれるいい男は結構多い。
そして残念な事に財力、知力、容姿において俺が勝てる相手では無い。
つまり、俺が彼らに勝っているのは藍が好いてくれていると言う事だけ。
それすら油断すればどうなる事か・・・

俺は自分磨きと藍との関係を肉欲だけでない強いものにしていく努力を欠かしてはいけないと言う事だ。

学校では藍と過度に接することはしない。
藍もあの当時に比べて俺にぞっこんなのだが、公衆の面前であることは理解していて教室や校内では俺とイチャイチャしようとはしてこない。その辺はしっかりしてる奴だ。

授業も何事もなく進んでいく。
時間を戻ってやってきた今の俺にとっては何もかも新鮮に映る。

放課後、生徒会書記の藍はその生徒会の集まりがあるからと言って出て行く。
「たっちゃん、待っててくれる?」
「ああ、待っててやるぞ」

人がいなくなった教室で藍の用事が終わるのを待つ。
その間に、空模様が急変する。
昼頃までは快晴だった空が急に黒い雲に覆われていく。

「あれっ、今日雨降るって言ってたかな?」

藍の花嫁宣言のせいで、いつも登校前に見るはずの天気予報を見忘れていた。
時間を経たずに、しとしとと雨が降り始める。

「まいったな」
生徒会の話し合いは終わらないものか。終わったって傘も持ってないしな。


「たっちゃん、終わったよー」
「おう…藍、雨が…」
言おうとしたところでハッとなる。
藍の隣に立っていた人の姿を見て、俺は思い出した。

「まだ小雨だから行けるかしら」
そう呟く女子生徒―当時の生徒会長だった橋詰絵里先輩―

…………この後、雨は急激に強くなり、その中自転車で帰宅するのを強行した先輩は、雨に濡れた道路でスリップして転倒し、運悪くそこを通りかかった車にはねられ、後々重い障害が残ってしまう―

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