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あの頃に戻って、取り戻せ
官能リレー小説 - SF

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あの頃に戻って、取り戻せ 13

藍の俺の嫁宣言のようなものには顔がにやけそうになったが、それよりも印象的だったのは倉野さん―倉野香織―のあの引きつったような、そのあとの茫然としていた顔だった。

あの頃の俺は、思い出すと正直藍より倉野さんと仲が良くて会話の数も明らかに倉野さんの方が上。
だから藍があんな形で他の男に流れて行って、取り返しのつかないことになってしまったのだ。

「たっちゃんはゆっくりしてて〜。私が今からお昼作るからね〜」
「ああ」
「ふふふふっ」
買い物袋の中身を取り出し整理しテキパキと作業を進めていく藍。本当に主婦みたいなスキルだなと感心しながら見ている俺。藍のお母さん・紫乃さんに本当にそっくりだと思ってしまう。

藍と結婚し損ねた世界では、紫乃さんにも嫌われてしまった俺は結婚式の時には冷たい顔をされた。
でもこの時点ではそう悪い関係ではなかった。

そんな事を考えていると色々思い出す。
速水家で俺と一番仲が良かったのは、藍のお父さんだった。
あの結婚式の時も君が結婚してくれたらなあと残念そうにしてくれたのもお父さんだが、この時にはお父さんも紫乃さんと離婚していた。

そうなのだ・・・
確かこの年の十二月にいきなりお父さんが長期出張になり、それも藍をギャル化させた要因の一つになってしまった。
その藍のギャル化から速水家もおかしくなり、2年の長期出張の後、紫乃さんとお父さんも離婚。
住んでた家も処分されてしまっていた。
噂では紫乃さんは熟女風俗で働いていたとか何かで、あの結婚式でも清楚な主婦だった紫乃さんのイメージがガラッと変わり、スナックのママのような雰囲気となっていた。
父親の分からない子供が4人も産んだらしいが、そのうち2人は藍の子供だとも言われて、それも引っくるめて受け入れた後輩は漢だともてはやされていた。

確かに速水家の惨状を救った後輩はすごいと思った。俺だったら絶対にできない。事実から目を背け何もかも捨て県外の大学に進学した俺とはえらい違いだ。
だったら俺は何をすべきか。
速水家の惨状を食い止める、それだけだ。
藍とイチャイチャしてるのがその第一歩だと、何となく感じている。
それを見た倉野さんの表情が、若干後ろ髪惹かれる思いを感じさせてしまうのだが…


「はーい、たっちゃんお昼できたよー♪」

そんなことを考えてる間に藍は俺の分まで昼飯を作っていた。

「よし、食べるか。頂きます」
「どうぞ召し上がれ」
俺は数口食べたところで
「うん、上手い。流石俺の嫁だな」
「えっへん」
とても嬉しそうで誇らしげな藍。その笑顔に癒されると同時にこの笑顔を守りたい、2度と失う訳にはいかないと決意を新たにする俺だった。

「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
昼食を終え洗い物も終えたところで、さてどうしたものかと思ったのだが……
「じゃあ、ご飯の後は……やっぱりデザートだよね?」
「うん?ああ、そうだな」
俺は藍の言葉を素直に文字通りに受けとめたのだが、
「じゃあ召し上がれ」
そう言って俺に抱きついてキスをしてきた。
?!?!
驚く俺に対して藍は数回チュッチュってした後に舌を入れて実に濃厚なディープキスに移行した。流石にそこまでされたら俺も応えなくてはならない。俺も唇と舌で藍に応える。
「んっ、随分と大胆で積極的だな」
「昨日の夜、ご飯の後はデザートだって言ってたのはたっちゃんだよ」
「ま、こんな極上のデザートなら大歓迎だけどな」
今朝の遅い朝食後にデザートが無かったのは?と言うのは野暮だよな。
「それに」
「それに?」
「さっき言ったでしょ。いっぱいイチャイチャするんだって」
さっきの倉野さん達への爆弾発言の一部か。かつての俺の記憶やさっきの倉野さんの表情から察するに、この時点での俺達の仲はやはり良くて藍が倉野さんを警戒、危険視している様だ。だからこそ大胆な腕組みだけで終わらずに昨夜が初めてだったと発表した上にこの後も俺とSEXする(と言ったも同然の)発言であり、それを自ら進んで実行に移したのだろう。経緯は兎も角、
《この人を失ってなるものか》
という点においては藍も俺と同様らしい。ならば俺もそれに応えなくてはならない。

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