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若き帝国宰相の肖像
官能リレー小説 - SF

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若き帝国宰相の肖像 1

プロローグ

「全艦主砲、斉射!」
第三十三星域における反乱軍との戦闘が不利な戦況から膠着状態となったのは、帝国元帥となった王妃の一声から始まった。
黒い軍服とマントをつけた妖艶な美女は念願の元帥の立場を満喫していた。
「母上様、敵艦が後退していきます」
「当然でしょうね。敵司令官の旗艦を狙い撃ちにしてやったんですからね」
「追撃しますか」
「いえ、ちょっとからかってあげましょう。
サラ、コロニーNo.4Aに暗号電文を送ってくれるかしら。内容は……」
黒髪のまだ若い女性の右後方の第二艦隊を任されている提督は元帥の旗艦アフロディーテとの通信を終えて、迅速に指示に従った。
「勝った」
サラ提督はそうつぶやいたのを、配下の副官は聞いた。その意味がすぐにわかった。
被害は甚大ではないとはいえ、総司令官の旗艦が大破したので補給基地であるコロニーに撤退した敵艦隊の提督たちの考えはサラにもわかった。
誰が総司令官になるか。
コロニーの設備ならば討伐軍など返り討ちにするのは容易い。その功績を誰がせしめるのかで、コロニーで討議するつもりなのだろう。
コロニーに帰還して皇家の私兵どもを返り討ちにするつもりだった敵の提督たちは、コロニーの要塞主砲が自分たちに向けられて放たれようとしているのに気がついて、射程範囲から回避しようと陣形が乱れた。
千隻を吹き飛ばすが三発射つとエネルギー充填まで半日かかるが威力は絶大。
コロニーで戦闘を傍観していた指揮者もなかなか性格が悪い。
サラは一発ぐらい射つと思ったが、威嚇だけで済ませた。
「陣形が乱れた今がチャンスなのでは?」
「見てなさい。こちらに向かって来ないでコロニーを攻撃し始めるから」
提督元帥、のちに黒獅子と呼ばれた王妃は愛娘に「とにかく、お茶を入れてくれてくれるかしら?」と言った。
多数の艦隊で取り囲むような陣形で追撃してきていた反乱軍の艦隊を崩すには、こちらが陣形を変えて強行突破するのが定石だが、その直後にコロニーの要塞主砲で狙い撃ちされたらひとたまりもない。
そのまま向きを変えずにWの陣形のまま後退。敵はUの陣形のまま追撃。
敵の総司令官の旗艦はUの一番奥だと判断して後退をタイミングをみて止め一斉射撃した。
タイミングをまちがえれば敵は多勢。UからOに陣形を変えて取り囲まれていたはずだ。敵艦の群れに囲まれたらワープ航法で離脱も困難である。
一斉射撃がもし敵の総司令官の旗艦から外れていたら、やはり囲まれて全滅もありえる危険な戦況だった。
「おぼえておきなさい。戦争には、もしもはないのよ」
紅茶にミルクをたっぷり入れてもらい一口飲んでから、娘に母親の声で目を細めながら王妃は言った。
サラは敵艦隊の陣形が無惨に散らばったとき、自分の艦隊だけでも突撃をかけたいのを我慢した。左側の第六艦隊の提督から通信が入ったのだ。
「サラ艦長、あのコロニーには俺が幼い頃に遊んだ公園がある。あのブランコを見せてやりたい。これに座れてたんだぞってな」
サラの二つ年上の恋人。熊のような巨漢だが優しい目をした男。白兵戦のほうが得意だが部下から慕われているため艦長に推薦され、元帥から艦長に任命されてしまったことをサラにベットでぼやく、軍人らしくない艦長である。
「しかたないわね」
サラは咳払いをひとつして通信を切った。副官はくすっと小さく笑った。サラを氷の女と呼ぶ連中に見せてやりたい表情をしていた。
皇家の私兵と敵から呼ばれている近衛隊だが、約五倍の旗艦数と要塞型コロニーと惑星の戦力がある反乱軍を討伐に行くと王妃が宣言したとき、あまりに戦力差がありすぎて半年前に崩御した皇帝陛下のあとを追う気のかと官僚たちは思った。
「敵艦からの通信が入っています」
「つないで」
王妃の目の前に青ざめた初老の提督の顔がモニターにあらわれた。
青ざめている理由は背中に銃口を突きつけられているからである。
「僕は降伏する。この艦には家族を人質にされたクルーがほとんどで、艦長を拘束すればこの艦は僕らのものだ。王妃様、囚われている人質を開放してくださるなら、僕らはどんな罪も受けます」
背の高い青年らしく、初老の提督の背後で話しているのだが、胸元あたりまでしか見えない。
「ぼうや、殺しちゃダメよ。男なのに細くて長いきれいな手をしてるのね。船長を拘束したら、船艦を要塞主砲の前につけて動かないで。こちらに合流するより人質は安全なはずよ。でも、勇気があればだけどできるかしら?」
「ありがとうございます!」

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