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もしもの地球防衛物語
官能リレー小説 - SF

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もしもの地球防衛物語 2

「ええ。これですね…?」
青蘭は放り投げられた機械を拾い上げて見回し、もう一度ボタンを押してみた。だが、もう何も起こらない。
「一回限りか…ではこれは私がセンターに持って行きましょう」
「ええ、ええ。よろしくお願いしますよ」
(あ〜あ…先生ったらま〜た鼻の下延ばしちゃって…)
青蘭にデレデレする権造を見て大介は思った。今年60で妻に熟年離婚された権造は、自分より30歳以上も年下の青蘭にホレているらしい。
(まぁ無理も無いか…青蘭さん美人だし、おまけに若くして北京大学の名誉教授でもある才女だもんなぁ…)
大介も青蘭に対して一種の憧れのような感情を抱いていた。もっとも“憧れ”と言っても「綺麗なお姉さんだなぁ」程度のものだが…。
「それじゃあ責任持って届けさせていただきますわ」
青蘭が立ち去ろうとした時、一人の男がやって来て口を挟んだ。
「待つよろし。私にも見せて欲しいあるよ」
この怪しいアルアル言葉の男の名は陳 珍(チン チン)。彼もプロジェクトメンバーの一人だ。
「陳博士…どうぞ…」
青蘭はなぜか少し不服そうに珍に機械を渡した。珍は機械を見回して言った。
「これ凄い発見ある。人類の将来に関わる事ある。これ今すぐ全員センター帰って調査分析する必要あるあるよ。張研究員、よろしいあるな?」
「え…ええ…では私は先にセンターに帰っています」
青蘭は足早に去って行った。
「あぁ…青蘭さん…」
悲しそうな顔になる権造に珍は囁いた。
「坂之上さん、あなた張 青蘭の事好きあるか?」
「え…えぇ!?陳さん、一体何を…?」
「隠さなくても判るある。でも張 青蘭あまり信用してはいけないあるよ。あれ北京大学の名誉教授いうの嘘の事よ。本当は人民解放軍の諜報員ある」
「う…嘘でしょう?青蘭さんがスパイだなんてとても信じられません…」
「本当ある。中国政府この遺跡に非常に注目してるある。これ上手く利用すれば全世界の主導的立場なれると思てるある。だから張 青蘭はじめ多くの諜報員、プロジェクトメンバーの中に紛れ込ませてるある」
「はあ…」
権造と大介は半信半疑だった。スパイなんて小説か映画みたいな話でいまいちピンと来ない。大介は言った。
「何にしても、この機械はセンターに持って行って研究班に分析してもらいましょう…」
「そうだな。何せ未だに機能が生きている機械だなんて初めての発見だ」
「あいやー!それいけないの事あるよ。センターの研究班の中にも諜報員いるある」
「えぇ!?」
「じゃ…じゃあどうすれば良いんですか…?」
「私の仲間の学者に渡して欲しいある。私達、政府のやり方いけないと思て、純粋に遺跡の謎究明したい信用出来る学者集めて政府の諜報員達に対抗する組織作たある。これ名簿ある。この中の誰かに渡すよろし」
そして珍は十数名の名が書き連ねられた紙を権造に渡した。

「美作君、どう思った?昼間の陳博士の話…」
夜、権造は部屋に大介を呼んで尋ねた。
「いやあ…何とも言えませんねえ…」
権造の机の上には布にくるまれたあの機械が置いてある。実はあの後、さらに同型の物体が十個以上発見されたため、上手くその内の一つを本物と偽って研究班に渡しておいたのだ。権造は言った。
「私は実は陳博士の方がスパイなんじゃないかとも考えたりしてるんだ。だってあの人怪しいんだもん。あんなアルアルしゃべる中国の人いないし…。…ていうかあの美しい青蘭さんがスパイだなんて絶対に有り得ないし…」
「そ…それは先生の主観じゃないですか…」
大介は権造が青蘭に機械を渡してしまうのではないかと考えると少し不安になった。
二人だってみすみす機械を中国政府に渡す気は無い。彼らは遺跡の調査結果を明かさず、自国のみで独占する気だ。この遺跡はそんな国家のエゴに使用されて良い代物ではない。人類の命運に関わる物なのだ。全世界が一致協力して解き明かしていかねばならぬ物なのだ。
「…私はちょっとウ○コに行ってくるよ。鍵かけずに行くから戻って来るまでこの機械見ててくれんかね?」
「…わかりました」
権造は便所に行ってしまった。大介はドアが閉まり、権造の足音が遠ざかって行くのを確認すると、ポケットから何かを取り出した。それは目の前にある機械と同型の機械(すでに壊れて機能停止している物)だった。研究室に沢山ある内の中から一つ拝借して来たのだ。
(すいません先生、俺はあなたを信用出来ない。あなたはきっと恋心からこの機械を青蘭さんに渡してしまうでしょうから…)
大介は黙って手の中の機械と机の上の機械とをすり替えた。

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