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新たな戦い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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新たな戦い 1

閑静な森の中の小径で、着ている鎧は罅割れ、血塗れになった若い男が、人生を終えようとしていた。
壊れた鎧は、おそらく銀色に輝いていたのだろう。
綺麗に整った顔は血と土にまみれ、彼の置かれた境遇を示していた。
おそらく合戦に敗れ、退却中に力尽きたらしかった。
大木に背を預けた彼の鎧の継ぎ目や穴から、彼自身の血が流れ落ち、血溜まりとなりつつある。少しずつ弱くなる呼吸、薄れゆく意識の中、彼の目に映る景色が少しずつ色を失い、暗くなっていく。
目の前には、彼が斬り伏せた追手の敵将兵の遺体が5人ほど横たわっている。
その姿も瞳が闇に閉ざされ、見えなくなっていく。
彼は薄れゆく意識で、主君の身を案じていた。我が君は無事に逃げ延びられただろうか…
瞳から光が消えて、心に浮かぶのは父母兄弟の事、友の事…
それも少しずつ薄れゆき、彼の意識が、静かに完全に落ち、心臓の動きもゆっくりと停止していった…


若く澄んだ、どこか暖かみのある女性の声が、どこからか聞こえる。

「英霊たる者よ、目覚めなさい」
「ん…」

男は、その声に目を覚ました。
彼は目の前に女性がいる事に気づく。
羽飾りのついた白い鎧に身を包んだ、戦乙女と言うに相応しい姿の、優しげな顔立ちの娘だ。

「わたしはエイル。英霊たるそなたを迎えに来た、ワルキューレです」
「ワルキューレ…やはり私は、死んだのか」
神々しい鎧に身を包んだ戦乙女は、見ているだけで癒されそうな慈愛の微笑みを浮かべて、告げた。その言葉は、彼の心に静かに、砂が水を吸うように自然に入り込んだ。

「騎士グレーブス。貴方は英霊たるに相応しい戦いを為し、そして息絶えました。よって、英霊グレーブス、貴方を我がエインヘリアルとして迎えに来ました」
「私が、エインヘリアル」

ワルキューレのエイルは、軽く頷く。
この世界の武人にとって、死後ワルキューレによって迎えられ、エインヘリアルとなるのは名誉で、武人達の憧れだ。
エインヘリアルはワルキューレに寄り添い、従い、共に戦う存在だ。
グレーブスは、自らが死んだという事実に愕然としつつも、自分がエインヘリアルに選ばれた事の栄誉と喜びを、少しずつ自覚していた。

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