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日本兵、異世界ニテ斯ク戦エリ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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日本兵、異世界ニテ斯ク戦エリ 1

神聖暦1096年、アルディオン大陸の北方に位置する大国ゴルドリア帝国は武力による大陸統一に向けて動き出した。
帝国は五万の大軍でもって南下を開始、これに対して大陸中央諸国は神聖ロザリア教国を中心とした対ゴルドリア軍事同盟を締結して対抗した…が、この同盟は事実上、形式的な物に過ぎず、帝国の最初の攻略目標とされたエルシオン王国は同盟国から何の軍事支援も受けられないまま帝国軍を迎え討つ事となった…。


「しょ…小隊長殿、ここは一体どこなんですか…?」
「お…俺に聞くな…」
ここはエルシオン王国領内、国境付近の山中…そこに奇妙な一団がいた。
カーキ色の軍服に身を包み、手には銃剣を装着した歩兵銃…そう、それは日本兵の集団だった。

「おかしい…我々は確かに南方のジャングルで米軍と戦っていたはずなのに…」
「ここはジャングルじゃありませんね。周りの草木…これは内地と同じ温帯の植物です。それに気温も一気に下がったみたいで何だか肌寒い…」
「あの妙な霧が出て来てから変になったんだ。一体どうなってるんだ?」

彼らは太平洋戦争末期、とある南方の島に配備された守備隊の内の一小隊だった。
軍事的にそれほど重要な島でもないので米軍もまたいで通るだろうとタカをくくっていたが、そこは抜かりない米軍の事…しっかりと攻略目標に入れられていた。
海岸で上陸を食い止める作戦は失敗し、ジャングルに退却したが水も食料も弾も無く、あまり長くは戦えない…。
そこで潔く敵に突撃して玉砕しようという結論に至り、ある夜、各小隊ごとバラバラに闇夜に紛れて米軍に近付いた。
ところが、いざ突撃という段階になって謎の濃霧が発生し、そして気付いた時には彼らの小隊(約40名)だけがこの森の中にいた…。

「マズい…これは非常にマズいぞ…」
まだ若い小隊長・神山 銀之助(かみやま ぎんのすけ)少尉は深刻な顔で言った。
「…味方は米軍に突撃して散ったのに、我々だけがおめおめと生き残ってしまったとなれば…このままでは敵前逃亡と見なされて銃殺だ!そんな不名誉、帝国軍人として耐えられん!お前ら!一刻も早く米軍を見付けて突撃するのだ!」
「そんな無茶な…」

「はぁ…はぁ…っ!!」
「待てぇーっ!!」
「女ぁ!!逃がさんぞぉ!!」
その頃、日本兵達の居る地点から少し離れた所では、一人の少女が必死に敵から逃げていた。
亜麻色の長髪をポニーテールにして束ね、パッチリとした二重まぶたに翡翠のような大きな緑色の瞳、顔立ちには未だどこか幼さの残る美少女である。
女性用の軽装の鎧に身を包み、腰からは両手持ちのロングソードを下げている。
彼女の鎧の胸部にはエルシオン王国の紋章が…一方、彼女を追う十人前後の男達の鎧にはゴルドリア帝国の紋章が描かれていた。

「はぁ…はぁ…きゃあっ!?」
木の根に足を取られて転倒してしまう少女。
たちまち追い付いた男達…ゴルドリア帝国の兵士達に取り囲まれてしまう。
「やっと追い詰めたぞ!」
「ちょこまか逃げ回りやがって!」
「見た所まだ15、6の小娘のようだが、可哀想だが敵の目は一つでも潰しておかねばならん…覚悟してもらおう」
そう言いながら兵士達の隊長格の男が剣を抜いて少女に歩み寄る。
「く…っ!」
少女はギュッと目を閉じた…その時である。
近くの茂みの中からガサガサ…と物音がしたかと思った、次の瞬間…
「撃てえぇぇーぃっ!!!」
 ズダダダダダアァーンッ!!!!
男の叫び声。
続いて今まで聞いた事も無いような轟音が響き渡った。

少女は恐る恐る目を開ける。
「うそ…っ!?」
彼女は目を疑った。
目の前にいた十人強のゴルドリア兵達が全員、体中から血を流して倒れていたのだから。
呆気に取られていると、茂みの中から見た事も無い姿をした男達が現れた。
「何だ?米軍にしては妙に火力の弱い連中だったな」
「いやぁ…そもそもコイツら本当に米軍だったんでしょうか…?」
「死体を見てみろ。白人じゃないか」
「でもこの装備…まるで中世ヨーロッパ騎士ですよ?」
「それは恐らく…あれだな。きっと米国は我が国以上に物資が欠乏しているのだ。大本営も言っていたから間違いない」

(な…なんなの?この人達…)
少女は突然現れた謎の集団をまじまじと見つめた。
敵…ではないのだろう。
助けてくれたから…。
そんな事を考えていると一人が近付いて来て話し掛けてきた。
「おい娘!貴様は米軍の慰安婦だな?貴様は我々の捕虜だ。貴様らの本拠地へ案内してもらおうか」
この奇妙な集団の皆が槍のような武器を持っているのに対し、彼だけは細い片刃の曲刀を持っている。
恐らくこの部隊の指揮官なのだろう。
彼らは一体何者…?
少女はハッと気付いた。
「…そうか!わかったわ!あなた方は同盟国が寄越してくださった援軍ですね!?」
「ば…馬鹿を言うな!何で我々が貴様らの味方であるものか!」
「でも帝国軍を倒して私を助けてくれたでしょう?」
「帝国軍は我々だ!」
「えぇ!?帝国軍だったの!?じゃあ仲間割れ!?」
「いかん!この娘は気が狂っとる!」
「二人とも、とりあえず落ち着いて…」
小隊長の補佐官である熊田 吾郎(くまた ごろう)軍曹が間に割って入った。

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