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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 58

女はすぐにリオンからそれを引っ込めると、今度はレネーの方に突き出す。
うつむこうとするレネーの顔を、ノエミは無理やり上げさせた。
その動作で、リオンはそれが何なのか悟った。

「鏡面写像転送機か!」
リオンは思わず大声を上げた。
「きょうめん…何それ」

大深度集合樹と呼ばれる、『受けた刺激を同株の兄弟にそのまま送る』特性のある植物がある。
それを利用して、鏡に映した像を光刺激として受信株に送らせるシステムを、鏡面写像転送機という。
おそらく送信先は首長とやらだろう。そちらでは、特殊な染料で染めた布が、受信株とともに水にさらされているはずだ。
受信した信号に反応して、染料が水中をうごめき、布の上に鏡像を再構成する。

リオンは不審に眉を寄せた。
大陸広域銀行や賞金稼ぎの組合が、同様の植物を使って本部・本社とやりとりし個人の照合を行っているが、あくまで指先を送信株に押し付ける、という物理刺激を伴ってのことだ。
鏡像に反応させる技術は、それとはわけが違う。

ハンゼ自体は交易が盛んで、最新技術の入りやすい国ではある。
だがこれは、一国の軍や神殿の中枢などが独占するような高度なものだ。
こんな僻地の一集落が、持っていていい技術ではない。

「詳しいね、リオン」
「本で読んだんだ。…ってことは、山道で俺たちを襲ったのも偶然じゃないってことか」
さぐるようにリオンはノエミを見上げた。
「どういうこと?」
「俺たちがあの場所を通るのを、ここから確認して飛んできたってわけだろ?」
ノエミは軽く肯定した。
「ええ。岩場に置いた鏡に通行者が映れば、すぐに伝わる仕かけになっています」
「そんな凝った仕掛け使ってまで、何のために男さらうわけ?」
レネーの疑問に、ノエミは機械をしまいながら答えた。
「我々が、女だけの氏族だからです」
「は?」

ノエミの口調はあまりにも事務的だった。
どうでもよいことを語っているように、錯覚してしまう。

「ですから繁殖のために、下界の男を連れて参るのです」



彼らのいる石造りの塔は、さらわれてきた男の牢獄…もしくは、女たちの後宮だった。
一人につき一部屋が与えられ、衣食住に不自由はさせない、とノエミは告げた。
そうして、リオンはエディットに、レネーはノエミに、それぞれ別の部屋に連行された。

エディットはリオンを、かなり高層にある一部屋に放り込んだ。
そして兜ごしのくぐもった声で告げる。
「夜になるまで、ここで待ちなさい。日が暮れたら仕事が待っているわ」
大柄な体と甲冑姿に似合わぬ、甘い声だった。

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