デッドエンド 157
だがそれを離そうとしたとき、リオンの硬直はようやくとけたようだった。腰を抱く手に力がこもり、そのまま引き寄せられる。
「…っ」
くちゅ、と水音をたてて、舌が入ってきた。片手が後頭部に添えられ、強く唇が押しつけられる。
絡みついてくる舌に応えて舌を動かしながら、自ら腕を抜いて彼の首に深く抱きつきなおし、溺れるように目を閉じた。
「…んっ…く」
ざらりとしたリオンの舌の上側が、濡れてなめらかな裏側の襞にもぐりこんで、丹念に舐め上げていく。奥深く押しあて、先を尖らせてつつかれ、唇ではさみこんできつく吸われてしごきたてられるうちに、口の端に、おさえきれずじわりと唾液があふれた。
「ふ…っ、ぅ…」
ぴちゃぴちゃと一気に激しくなった水音が、ぼうっと熱くなった頭を刺激する。
息苦しくて、もうどちらのものともつかない唾液を、うごめきまわる舌をそのままに、何とか喉奥に流し込み、ごくりと飲み込んだ。
呼吸困難のせいばかりでもなく、閉じた瞼に涙がにじみ出た。どくどくと激しく拍つ心臓に合わせて、血液がめぐるとともに全身を甘い痺れが覆っていく。その正体は、言い訳の余地もなくはっきりとした快感の塊だった。ベッドで裸で抱き合っているときと、寸分違わない。
逃げる気はないのに、リオンの貪りつく勢いのまま背が反る。膝はとっくに力を失っていて、彼にすがって立っているのがやっとだった。
逃がすまいとするのか後頭部をきつく押さえつけていた彼の片手が、髪に指をからめながら移動し、耳朶を弄くりだした。
「…あっ…」
熱くなった耳朶を、少しだけ冷たい指先が撫でる。耳の裏側から入って、内奥をくすぐる。びく、と身が震えた。冷風にさらされたときと真逆の熱に、体は全く同じように反応していた。竦みあがって肩を縮める。
そして彼はようやく、唇を解放してくれた。唇同士が離れたのちも、舌先は名残りありげにしばらくからみ合っていた。互いに荒い息づかいが、広場の暗闇に吸い込まれていく。
それから、息を整えるつもりで、彼の胸に顔を埋めようとした。しかし当のリオンがそれを許してくれなかった。彼は、指を這わせていたのと同じ右の耳に唇を押しあてたのだ。
耳朶に舌をからめ、内奥までねっとりと舐め上げ、吸い上げる。じゅる、と唾液をすする音が、恥ずかしいほどはっきりと耳の奥に響いた。反射的に、私は逃れるようにじたばたと身をよじった。
「あ…っ、だ、めっ、そこは…」
「……」
リオンは何も言わず、制止を無視して続けた。